大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
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No.030
クリスマスツリーの規則性を探そう
モミの木の数性の観察
12月18日 水曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

街はすっかりクリスマスシーズンとなりましたね。先日銀座に行ったら、ミキモト*1)(真珠のお店ですね)をはじめとして、たくさんのお店にクリスマスツリーが飾られていました。



すてきなクリスマスツリーですね。

私たちの家では、以前、プラスチックで作られたツリーを飾るおうちが多かったのですが、最近の本物志向のブームで、ミキモトほどは大きくなくても、本物のモミの木でツリーを飾る家庭が増えてきているようです。

モミの木のような葉がトゲのように細い植物のグループは「針葉樹」といいます。

今の時期は、1年でもっとも針葉樹を観察できる時期だということができると思います。

針葉樹の観察はなぜ、冬が良いのかというと、針葉樹は冬に葉が落ちない種ばかりなので、ほかの木が葉を落とす冬の方が観察しやすいのです。

先日、針葉樹の観察にこのコラムでも何回かご紹介した八ヶ岳に行って来ました。

いつも夏になると何回も植物採集や、小学校の移動教室の講師として訪れている八ヶ岳ですが、冬の時期に訪れたことはなかったので、冬の八ヶ岳はどんな風だろうと思って見に行ってみると・・・



どうですか?ここに見える緑の木は針葉樹ばかりです。

さあ、モミの木を観察してみることにしましょう。
クリスマスツリーを見てみると、枝がきれいに平面的に出ているのを思い出していただけると思います。
どうして、モミの木の枝は平らに成長することができるのでしょうか?

平らに広がっているモミの木の枝の1つを下から見上げるような格好で、写真を撮ってみました。



モミの木の枝はきれいに平らになっていますね。

どうして、こんな風に平らな枝を作ることができるのでしょうか?

その秘密は枝の先にありました。



枝の先には3つの芽が横一列に並んでいるのがわかりますね。1と2の芽は左右に伸びて3の芽がまっすぐに伸びることで平面に枝を伸ばしていくことができるのです。もしも、3の芽の上下に芽があったら枝は全体を見たとき平らにはなりませんよね。

以前に枝の年齢を数える方法*2)をお話ししましたが、そのやり方をモミの木にも適用して、このことを確認してみましょう。枝の節に注目して、モミの木がどのような枝分かれをしているか調べてみましょう。



黄色い枝が1年生の枝、青い枝が2年生の枝、赤い枝が3年生の枝です。
こうやってみると、すべての枝は3つずつに枝分かれしていることがわかります。

このように、すべての枝が3つづつ枝分かれする(すなわち芽が3である)性質を「3数性」といいます。

3数性をとるという仕組みは葉を平らに広げることになり、日光をより効率的に受けるしくみであるといえます。もしも、1つの枝の先端に4つの芽ができる4数性だったら枝は立体的に広がってしまい、下側の芽は日光が当たらずに結局枯れてしまい、無駄になってしまうでしょう。ですから、4数性でもなく、2数性でもなく3数性であるということに意味があるのです。

さて、モミは3数性と言っておいてなんなんですが、例外が1カ所だけあります。どこにあるでしょう。みなさんわかりますか?

3数性は日陰になってしまう枝葉を作らない、無駄を出さない工夫であるといえると思いますが、そうした制約のない唯一の場所があるのです。それはどこでしょうか?



わかりましたか?正解はモミの木の頂上の枝です。
モミの木の頂上の枝は一番上にありますからどんな風に枝を展開しても光に当たり損なうことはありませんよね。

このモミの場合には頂上の芽は5個あったようですね。モミの枝の先はみな同じ先端にいるのにどうやって自分が頂上にいるのか、脇の枝にいるのかわかるのでしょうね。

クリスマスツリーを街で見かけたら、芽の数、数性に注目して観察して見てみてください。今まで見えてこなかった新しい発見ができると思います。


この1年間モバイルガーデンを読んでいただいてありがとうございます。
また来年も楽しい話ができれば、と思っています。
お風邪など引かないように、楽しい年末、新年を。
そして、メリークリスマス!

*1)
http://www.mikimoto.com/jp/index.html

*2)
http://www.macmem.com/endo/mb200209.html



No.029
海辺に生きる
グループ越えた共通性
12月11日 水曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

藤沢と鎌倉をむずぶとても短い路線を運転する江ノ島電鉄という鉄道会社があります。先日、その江ノ島電鉄(江ノ電)に乗って海を見に行きました。



江ノ電はご存じない方もいらっしゃると思いますが、1999年9月に桑田佳祐監督が撮影した「稲村ジェーン」の舞台となった「稲村ヶ崎」はこの江ノ電の駅名なのです。

江ノ電は海辺のごく近くや、民家の間を縫うようにして通り、窓の景色を見るだけでも楽しいところでした。

私はその「稲村ヶ崎」で降りて、海辺を散歩しながら歩いてみることにしました。



海辺というのは遮る物もないので日光はたくさんあるし、海ですから水もたくさんあり、海辺の気候は暖かいと言いますから植物の生長には最高の気候のように思いませんか?

ところが実際歩いてみると、植物はまばらで、背の低い物ばかりで、しかも半分枯れながらやっと生えているような植物が多いのに気がつきました。

海辺の環境をよく考えてみると・・

「遮る物がない」と言うことは、「常に突風にさらされている」と言うことだし、「水がある」と言っても、塩水は植物はそのまま使うことはできませんし、波をまともにかぶったら植物の体内の水を吸い取られてしまうかもしれません。

「日光がたくさんある」というのも、逆に言えば、常に体内の水を吸い取られて慢性的な水不足となるかもしれません。また、砂地が主体の海岸では栄養がみんな流れていってしまいます。

こんな風に考えると、

常に強風が吹いている。
日光が強く当たる。
水が不足している。
肥料となる物がない。
寒暖の差が激しい。

こうした環境は海辺以外にどんなところを思い出しますか?

そう、「砂漠」です。

植物の楽園だとはじめ思っていた海辺の環境は実は「砂漠」の環境に近かったのです。

では、海辺で植物たちが生きて行くにはどんな工夫をしていけばいいでしょうか?


トベラ


シャリンバイ


ハマヒサカキ


ツワブキ

海辺の植物を3種撮影してみましたがこれらの植物は全く違うグループに属しています。
しかし、葉の表面がつるつるして光っていることに注目してください。さらにこの3種はみんな葉が厚いのです。

葉の表面をつるつるした層(クチクラ層)によって覆い、葉を厚くすることによって水分の蒸発を防いでいるのです。

全く違ったグループに属しているこれらの植物たちは海辺に生きるための努力をしたところ、種の違いを越えて似たような形(工夫)になったと考えられます。

また、強風に耐えるには背を低くして、そして、根を地下深くまで張ったり、風でとばされないように植物同士がマット状に固まって生育する種もあります。

植物はたくさんの種がありますが、それぞれ相談して決めるわけでもないのに結果として同じやり方をしてしまう例は海岸の植物だけではなくいくつもあります。

特に、砂漠や、海辺、高山と言った植物が生きるのに厳しい環境では植物の生きられる方法が限られてきてしまうので、それぞれの工夫が似てきてしまうようです。

さて、海辺にいるのは植物だけではありません。昆虫たちも厳しい環境の中でがんばって生きています。

上に示した植物の葉は葉の縁がくるっと丸まっていますよね、そのくるっと丸まった縁をそっと開いてみてください。そこにきっと小さな昆虫たちが強風から逃れてつかの間の休息を取っているのを見つけることができるかもしれません。

これから海にゆく、ということはあまりないかもしれませんが、初日の出を見に海へゆくときなどに観察してみるのもおもしろいと思います。


No.028
赤くなる秘密
12月1日 日曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

遠藤です。みなさんこんにちは。
今年ももう12月。残り1ヶ月となりました。
みなさんはいかがお過ごしですか?

前回、予告したように今回は、なぜ赤くなるはずの葉なのに、黄色のまま成熟してしまう物もあるのかについて考えてみたいと思います。

紅葉のしくみを簡単に説明してみたいと思います。インターネットを検索するとたくさんの説明がありますが、主人公は

・アントシアン(赤)
・クロロフィル(緑)
・カロチノイド(黄)

この3つの色素です。

元々植物の葉にはクロロフィルとカロチノイドが存在しています。普段、黄色に見えないのはクロロフィルがあるため、

緑色+黄色=黄緑色

のような足し算で、緑の葉に見えるわけです。

黄色の紅葉(黄葉)は

クロロフィル(緑)が分解することによって

黄緑色(夏の葉の色)−緑色=黄色

と言うように黄色になります。

では、赤い紅葉はどのようになっているかというと

黄緑色(夏の葉の色)−緑色+赤色=赤色

と言うようになります。
赤い紅葉でも黄色は残っているのですが、赤色が濃くなるために相対的に黄色は薄くなって、あの赤い紅葉となります。

では、赤色のアントシアンはどのような条件できるのでしょうか?

御嶽山での紅葉の観察から考えてみましょう



このカエデはタカオカエデといいますが、このカエデでは木の外が赤くなっているのがわかると思います。

どうして外側だけが赤くなるのでしょう?
もう少し観察してみました。



これはウツギという植物の紅葉ですが、手前の葉を1枚はいでみると・・・



どうですか?葉を取ってみると、取った葉に隠れていた部分はまだ緑色のままです。

この、木全体についてと、葉1枚1枚についての観察をまとめると

1)1つの木の中でも光が当たる外側の方が赤くなる。
2)1枚の葉でも、光がよく当たる部分だけが赤くなる

ということがいえそうですね。
葉が赤くなるには「日光」、さらにもしかすると「温度」が関係しているかもしれませんね。

調べてみると葉の中の糖分がアミノ酸などと化合してアントシアン(赤)となるようです。強い日光にさらされると糖がたくさんできるためにアントシアン(赤)もたくさんでき、紅葉の赤もより鮮やかになるというわけです。

もっときれいに染め分けができている葉を見つけました。



この植物もウツギですが、この重なった葉をちょっとずらしてみると・・・



このように、前の葉のギザギザ(鋸歯と言います)の部分まで写し取られているのがわかります。きれいですね。

紅葉というと、1枚の葉は同じように染まるのだと思っていたのですが、日光や糖分の条件など、いろいろな条件によって黄色のままだったり赤がより鮮やかになったり色が変わったりするようですね。

紅葉という誰でも知っていることでもよく観察してみると、いろいろな驚きがあると思います。是非、本を見たりするだけではなく実物を通して植物を観察してみてほしいと思います。

図鑑に載っている写真を虫眼鏡でよく見ても、印刷の網点が見えるだけですが、実物の植物をよく見ると、表皮が見えたり、毛が見えたり、時には細胞も肉眼で見えることもあります。


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