大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
不定期に更新します。

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No.042
生のワカメは何色?
色の足し算と、光を求める工夫
3月20日 木曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

知り合いの方が、海に遊びに行って、ビニール袋いっぱいのワカメをおみやげに取ってきてくださいました。
ワカメがそんなそんな簡単にとれるなんて知らなかったのですが、干潮(潮が引いている時間)の時に出かけると、場所によっては簡単にとれるそうです。

生きているワカメってどんな色をしていると思いますか?
ワカメですから、透き通るような黄緑色か、もしくはスーパーで売っている「生わかめ」のちょっと濃い緑色を期待して、ビニール袋をあけました。

すると・・・何か変な色の海藻が入っていました。
ペーパータオルを引いて中から2本引き出して並べてみました。



これは、確かに海藻ですが、ワカメではなくて、小さな「昆布」なのではないかと私は思いました。

急に自分に自信がなくなってきました。そこで、ワカメってどんな色をしているのかについて、事典を調べてみました。
ワカメの項目を調べてみると、ワカメは「褐藻(かっそう)」であると書いてあります。

褐藻、というのは「褐色=やや黒みをおびた茶色」のことです。もう一度ペーパータオルの上の海藻を見ると確かに褐色です。じゃあ、あの黄緑のワカメは?と思って更に事典を読み進めると、「生ワカメを湯にとおすと、黄緑色に発色する」と書いてありました。

早速、生ワカメを煮てみることにしました。どのくらい煮ると黄緑になるのかな?と思い、ストップウオッチを持って沸騰した鍋の前にたったのですが、なんと、入れた瞬間に褐色から私たちの見慣れた黄緑色になりました。



この色の変化は劇的で、とてもおもしろく、何度も何度もちょっとずつワカメをお湯に入れては引き出してみる、ということを繰り返しました。



この左側が「もとの」ワカメで、右側が「お湯にちょっとだけ浸けた」ワカメです。

この褐色から鮮やかな黄緑色の変化はどういうしくみになっているのでしょうか?

褐藻といわれるグループに属する海藻はクロロフィルという色素とフィコキサンチンという色素を持っているそうです。

クロロフィルの色は緑色で熱が加わっても色の変化は少ないのですが、フィコキサンチンはそのままだとオレンジがかった黄色をしており、これが海藻のタンパク質と結合すると赤くなります。そして、この結合が熱を加えると簡単に結合が解けてしまうのです。

以前、紅葉のしくみ *) のところでお話ししました色の足し算でいうと海で、生きているわかめの色は

「赤」+「緑」=「褐色」

というようになります。

ところが、熱が加わるとタンパク質との結合が解けてフィコキサンチン本来のオレンジがかった黄色となります。

すなわち

「オレンジがかった黄色」+「緑」=「ワカメ色」(黄緑色)

となるのだそうです。

では、なぜ、ワカメは2つの色素を持つのでしょうか?簡単に説明すると2つの色素を持つと、「黄緑の色素の分」と「赤の色素の分」の2つの光を吸収できるようになります。

海の中は地上に比べて日光があまり届きにくい環境にあるので2つ分の光を吸収することで日光を効率的に使用して光合成を行う工夫をしているのです。

その夜は、おいしいワカメのサラダとおみそ汁を楽しみました。

*)
http://www.macmem.com/endo/mb200212.html
12月1日号「赤くなるしくみ」をご参照ください。


No.041
ヒヨドリの定期検診
その後の「ぴよ」と私
3月6日 木曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

2月のこのコラムで冬の雪の中で傷ついたヒヨドリの若鳥を拾った話をお伝えしました*1)
その後、あのヒヨドリはどうしているのか?というお手紙をたくさんいただきました。中には「ひょっとして食べちゃったの?」という方もいらっしゃいました。

ご安心くださいヒヨドリ君は元気にしていますよ。

前回、昭島動物病院*2)の植松先生に見てもらった時に「しばらくしたらもう一回受診してください」といってくださっていたので、足が折れて、テーピングしてもらったヒヨドリの足の具合はどうなったのか?、どのくらい回復していつ頃放鳥でできるのか?。そんなことをお伺いするために再度、昭島動物病院に植松先生を訪ねてみました。

早速先生に見てもらったところ、骨折していた骨はついており、神経もほぼ正常につながっているので、足はリハビリすることでだんだんと使えるようになるだろうとのことでした。

体は、まだ体重が回復していようで「えさが足りない、もっとえさをやっても大丈夫だ」とのことでした。私は野生に戻すためにはあまりえさをやりすぎて、過保護にしてはいけないと思って比較的セーブしてきたのですが、もっとたくさん、ほしいだけあげてもいいとのこと。また、えさは九官鳥のえさ



をタンパク源として与え、ビタミン等はミカンや、リンゴを切ったものをあげればいいとのことでした。

これからは安心してたくさん果物やえさをあげることができます。

羽はまだまだ生え替わっている途中で、飛べるようになるにはまだしばらくかかるそうです。私は、傷んだ羽はすぐにはえ替わるのかと思ったのですが、そういうことはなく、はえ替わりの時間は傷んでも正常な羽でも、同じだけの時間がかかるそうです。そこで、それまでは飼っておいてあげないといけないことがわかりました。このサイクルは半年から1年かかることもあるとのことでした。

先生は少しでも早く飛べるようにするため「接ぎ羽」という技を見せてくれました。これは古くは鷹匠のテクニックだそうで、昔はこうした鷹匠の技術は世界で日本が最も優れていたとのことです。

どんな風にするかというと*3)



このように羽が折れると、全体が生え替わるまで羽は折れたままです。
そこで、



このように折れたところを切ってしまって、羽の主脈の所に細い針金を刺し、アロンアルファでとめるという方法で今回は行いました。



するとこのように、羽は元のような形に戻ります。

くっついた羽は形こそ元のようになりましたが、まだ飛ぶには不十分で、ヒヨドリ自身が毛繕いをして飛べる羽へと自分で微調整するとのことです。

何となく乱暴なようですが、鷹匠は飼っている鷹の羽の手入れにこの方法を使っており、狩りで傷ついた鷹の羽をこのように修理したそうです。

種が同じなら、同じ個体の羽でなくてもいいため鷹匠は落ちている鷹の羽があると拾って修理用の予備パーツとしていたそうです。



この写真は先生二人がかりで接ぎ羽をしているところを撮らせていただきました。
左側の先生が羽を接いでいるところで、矢印の部分がジョイントとなる針金です。

先生に貸していただいていた九官鳥のかごは体力の回復のために小さいかごでしたがこれからはリハビリのために大きなかごにした方が良いでしょう、ということだったので、



このようなうさぎ用の大きなかごでしばらくリハビリしてもらうことにしました。

たまに部屋の中に放してみるのですが、今のところ高さ1mくらいしか飛び上がることができません。



生死をさまよう段階は脱したので、半年くらい飼うと足もだんだん掴む力が回復して、さらには根も生え替わって飛べるようになるだろうというお話でした。夏前までにはヒヨドリを大空に返すことができるのではないかと思っています。

私は、すぐに放鳥することができると思っていたので情が移ってはいけないとヒヨドリに名前を付けることはしないできました。でも、しばらくこのまま飼い続けないといけないことがわかったので、家族で相談して「ぴよ」という名前を付けることにしました。

最近は、ぴよは朝、窓の外にヒヨドリたちがやってくるとケージの中で「ぴよぴよ、きゅるきゅる・・ぴよっ」っと、鳴くようになりました。

とってもかわいらしい声なんですよ。でも、いつかはぴよを放鳥しなくてはいけない時が来ます。きっと、ちょっと寂しい別れになるんでしょうね。
でも、その日を楽しみに、毎日をぴよと暮らしていきたいと思います。

*1)
http://www.macmem.com/endo/mb200301.html
1月24日号「雪の朝にやってきた君へできること」をご参照ください。

*2)
http://www.aaho.jp/
昭島動物病院。
今回も無料でお世話になってしまいました。
新しいケージを新調したので、お借りしたケージはきれいに洗ってお返しに上がりたいと思います。

*3)
これらの羽のイラストはイラストレーターあじこさんにお願いしました。快く引き受けてくださったあじこさんに感謝したいと思います。

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前回のコラムでお知らせしたカレンダーですが、東京都三鷹市の田原さんに当選しました。ご応募ありがとうございます。残念ながらはずれてしまったみなさん、すいませんでした。また何か企画できればと思っています。


No.040
交渉のすすめ
楽しい損失補填術をさぐる
3月3日 月曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

昔、アルダスという会社にパースエージョンという、マック専用のプレゼンテーションソフトがありました。このソフトがデファクトスタンダードだったので、このソフトを使うためにマックを購入する人もいたほどでした。

今でいうとパワーポイントに相当するソフトですね。
アルダスはページメーカーとともにアドビに買収され今はなくなっています*)。

何でこんなことを持ち出したのかというと「説得」(パースエージョン)、交渉というものをもっと気軽にやってみると、良いことが多いと最近感じた事件があったからです。

今月1日に私は広島に飛行機で出かけました。朝、7時20分羽田発の飛行機で広島に行き、夜の便でかえって来るという日帰り旅行です。



3月1日・・そう、この日は「所沢にある国土交通省の飛行機管制システムのトラブル」で、飛行機の発着が麻痺した、ちょうどその日だったのです。

トラブルが起こったのは朝7時頃だったそうなので、ちょうどトラブル真っ最中で私の乗った便は、本来なら1時間半で広島空港まで到着するはずが、出発までに2時間、さらに飛行機のブレーキトラブルで1時間半羽田の機内で待機させられ、結局広島空港につくまでに5時間を要するということになってしまいました。

しかも、帰りになって、広島空港行きのリムジン乗り場にやってくると今日の便は機体の準備ができないために欠航します。という張り紙がしてありました。

さて、あなたならどうしますか?

私はまず、全日空の予約センターに電話をしてみました。
オペレーターの話では

・今回の事故は国土交通省の責任であり、全日空に責任はない。
・帰りの分の航空券は明日の便に振り返ることはできるが、どの便になるかはわからない。
・これ以上の、宿の手配やその料金の負担はすることはできない。

ということでした。

確かに、全日空には責任はないかもしれないなぁ、と思いながらも、少なくとも私には責任はないのに、明日まで広島に滞在しなくてはならなくて、その費用も自己負担とはおかしい・・のようなことを言ってもう一押しすることにしました。

すると、

・往復航空券の払い戻しに応じる

という回答を得ました。

しかし、

・広島空港までお金を取りに来てほしい

ということを言われました。

時計を見ると、30分後に東京行き最終の新幹線・のぞみの発車時間が迫っています。広島空港は、広島駅からリムジンバスで往復2時間。

ここで諦めてはいけないと思い、それは無理なんですけれどとお願いしてみるとしばらく上司と相談されたのか、

・明日か、あさってに羽田空港のカウンターまで来てくれれば払い戻しに応じる

ということにしてくれました。

本当は、新幹線代くらい出してくれても・・・と思ったのですが、のぞみは後30分したら出てしまいますので、交渉はとりあえず最低限の約束をしていただいて、のぞみで帰りました。

さて、次の日友人でやはり1日に九州に出かけて戻ってこれなくなり、新幹線で帰ってきた友人にこの件を聞いてみました。すると彼は

「飛行機代+新幹線代が全額払い戻し。よって、交通費はタダでした。」

とのこと!
私はびっくりしてしまって、どうやって交渉したの?と聞いてみました。

すると彼は

------------------

・今回は人災である

・飛行機会社に過失はないかもしれないが、旅客と交通機関という目で見れば
 問題は交通機関側にあるのは明確

・損失は国(国土交通省)或いはNECが負うべきであり、旅客が負う合理性はない

・当時、空港での地上乗務員の対応が不十分

・当時、明日以降の振替も確実でない状態にあり、新幹線が確実な手段であると
 説明を受けた(但し、その場では費用負担について話し合える状況ではなかった)

# 交渉は航空会社に同情しつつ、言うべきことははっきりと

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こんなアドバイスをしてくれました。

そこで、もう一度全日空と交渉してみることにしました。

全日空側といろいろお話をして、本来なら往復航空券だけの返金(約1万円)だったのですが、新幹線代の返還(約2万円)には応じてくださいました。そして返還場所も羽田空港ではなくて、もっと近い東京駅、八重洲の事務所で受け付けてくれることになりました。

しかし、全額の返還の要求には

・旅行したのに全額払い戻すなんておかしい、非常識だ

ということで認めてもらえませんでした。

全日空はこの交渉で、友人は全額返還されたと言ったところ「全額返還した人はいない」と言っていましたが、実際の返金の歳に窓口では「当初混乱があり、いろいろ問題のある対応をした」と言っていました。

いろいろありましたが、結局、当初の

「明日の航空便に振り返る」だけから「新幹線代金の返還」へと大幅に良い条件で交渉することができました。

私の要求した条件が非常識であってもそれを判断するのは全日空ではなく私たちの方であり、同じサービスを受けることを主張するのは「常識」で、それを非常識扱いする方がよっぽど「非常識」だと思います。

では、担当者はなんと言えばよかったのでしょうか

「全額払い戻したのは混乱時に起きた当社のミスでした、申し訳ありません。結果的に旅行はできたわけですから、航空運賃の払い戻しか、新幹線代のどちらか高い方を払い戻すことにさせてください」と言えばよかったのです。結局そうなったのですから。

今回の件で思ったのは

1)常識的に損しないくらいの損失補填は可能である。
2)現場の混乱に乗じると交渉を上手にできることもある
3)時間が経ってくると情報が集まってだいたいの交渉の「落としどころ」がわかるようになる。
4)気が重くなったら、適当に交渉をうち切る。

この4点が重要だと思いました。

2)は、私の友人がうまくいった例ですが、3)とは矛盾しています。
2)は交渉の上級者向け、3)は初心者向けで、私たちは3)を心にして、インターネットや、友人の情報を集めて交渉に当たると良いと思います。

4)は交渉していて何で自分はこんなことに貴重な時間を費やすのだろうと思うことがあります。そんなときには交渉をそこまでにするとよいと思います、精神衛生はお金では買えないからです。交渉ごとも楽しくなくなったらやめるようにすると良いでしょう。

私の場合は、私の友人のようにはうまくいきませんでしたが、知らずに交渉していれば、半分しか損失を補填してくれなかったことになります。

さらに、同じ日に旅行をした友人に聞いてみたところ、やはり同じトラブルにあった人がおり、その人はどういう交渉をしたかというと

「払い戻しは受けなくても良いので、3月15日に国内の自由な場所への往復航空券と取り替えてほしい」と言って了承されたそうです。

旅好きにとってはお金が返ってくるよりも、もう1回旅行ができた方が良いのですね。

交渉も人それぞれです。みなさんなら、どのような交渉をしますか?
普通は誰が交渉しても同じ結果になるはずだと思いがちですが、今回のような交渉のやり方によって全然結果の違うことになる例もあるようです。

*)
アルダスの会社のマークは今でも、アドビ・ページメーカーのaboutの画面にちょっとだけ見られます。


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