
大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
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| No.048 明るいほうへ スミレの親心 5月20日 火曜日 遠藤です。みなさんこんにちは。 私の好きな詩人に「金子みすゞ」さんがいます。 彼女が生まれた山口県先崎ににも、一度出かけたことがあります。(その時のお話は2002年5月5日のモバイルガーデンのコラム「ナツミカンの由来」にも少し書きました。*1) 彼女の詩に「明るいほうへ」という作品があります。 明るいほうへ 金子みすゞ 明るい方へ 明るい方へ 一つの葉でも 陽の洩るとこへ。 やぶかげの草は。 明るい方へ 明るい方へ。 はねはこげよと 灯のあるとこへ。 夜とぶ虫は。 明るい方へ 明るい方へ。 一分もひろく 日のさすとこへ。 都会に住む子らは。 解説は、必要ないと思いますが、葉が求めた光は「太陽」。そして、子供達が求めた光は「正義や未来」を表しているのではないでしょうか? 植物は、光合成のために光に効率的に当たる必要があります。そのために、光の当たる方へとその葉を動かします。 このことはみなさんも、ご存じだと思います。 私の家の庭では4月、スミレが咲きました。 ![]() 現在は、このスミレは、果実となっています。 ![]() 上の写真中央の3つに裂けた果実の中にある茶色い円い物が種子です。 スミレの種子はこの裂けた果皮がだんだんと閉じてゆくにしたがってはじかれて遠くに種子を飛ばすようなしくみになっています。 連続写真でちょっと見てみましょうね。 ![]() ![]() ![]() このような順序で3列に並んだ種子の真ん中の列から黄色い矢印の方向で押されることによって飛び出します。例えるなら茹でた「枝豆」のさやを押してつるっと飛び出た種子を食べるみたいに、だんだん押されながら種子が飛び出すのです。 庭をあちこち見回すと太陽がまんべんなく当たるところに生えているスミレは ![]() このように、3つに裂けた果実は360度いろいろな方向を向いています。 ところが、 ![]() この写真のように写真の後ろ側が暗いときには、3つに裂けた果実はすべて、より明るいこちら側を向いています。 それは、たぶん、自分の子供達により「明るいほう」で生きてほしいというスミレの親心なのかもしれません。 *1) モバイルガーデン 「ナツミカンの由来」 http://www.macmem.com/endo/mb200205.html No.047 よりよい未来のために 自家受粉を防ぐしくみ 5月14日 水曜日 遠藤です。みなさんこんにちは。 四季折々、園芸店をのぞいてみると、いろいろな草花がそのステージに登場しては去っていきます。そんな中で、最近見つけた植物にこんなのがあります。 ![]() この2つの花を観察して、みなさんはどんなことを見つけだすことができますか? 私が気づいたのは左側の花はちょっと枯れ気味ですが雄しべはたくさんの花粉ができていて、右の花は花粉はもうすっかり出払ってしまっています。 雌しべに注目すると、左側の花の雌しべはまだ、先端(柱頭)が開いていないので、花粉を受け取ることができないのに対して、右の雌しべは柱頭が開いていて、花粉を受け入れる準備が整っています。 そうです、雌しべと、雄しべは成熟の時間を同じ花の中で「時間差」を付けているのです。みなさん分かりましたか? 私たちは学校の授業で、「雄しべの花粉が雌しべについて種子ができます」と習ったと思うのですが、その時、説明に使われる図は1つの花の中で受粉が行われていると思います。 それだけが原因ではないと思いますが、同じ花の雄しべの花粉が雌しべについて種子ができることが普通だと思ってしまいがちです。 しかし、そうした生殖の様式(自家受粉)はあまり一般的ではありません。 自家受粉にも利点はあるのですが、できれば、同種他個体と花粉をやりとりした方が多様性に富む子孫を増やすことができるのです。 上の写真の植物は1つの花の中で雄しべと雌しべの成熟する時期をずらすことで「自家受粉」を防いでいるのです。 どちらの成熟が先なのかは種によって様々で、雄しべが先に熟して雌しべがあとのパタンの植物を「雄性先熟」逆に、雌しべが先に熟して雄しべがあとに成るパタンの植物は「雌性先熟」の植物といいます。 今回の植物は「雄性先熟」でしたね。多くの植物でこの「時間差」を観察することができますから、みなさんも観察してくださいね。 次ぎに、自家受粉を防ぐ別のパタンを紹介しましょう。 これも、同じ園芸店で見かけた植物です。 ![]() <どうですか?彼らの「工夫」は分かりますか?ちょっと高度な工夫なんですよ。 同じ種でも、雄しべの長さと雌しべの長さが違うのが分かるでしょうか? 上の写真、Aの花の写真では、雄しべはよく見えていますが、雌しべは花の中に引っ込んでしまって観察することができません。一方、下のBの花の写真では逆に雄しべは花の奥の方にちらっと見えるだけなのですが、雌しべは柱頭が花の外にまで出ています。 ここまで観察して理解したところで次の図を見てください。 ![]() これは、A,Bの花を縦切りにして横から見た見たところの模式図です。 雌しべの花柱の長さに注目してAの花を短花柱花(たんかちゅうか)、Bの花を長花柱花(ちょうかちゅうか)といいます。早口言葉みたいですね。 では、なぜ、このような2形があるのでしょうか? この花がどんな風に受粉をするのかを見て行きましょう。まずこの花は雌しべの付け根に蜜を出します。そして、昆虫を呼びます。 ここで、左側の短花柱花の花にハチがやってきて密を吸ったとしましょう。そうしたら、短花柱花の花粉(赤で示しました)は蜂のどこに着きますか? だいたい顔のあたりに着くのではないでしょうか? そして、今度は、右側の長花柱花の花に蜜を求めてやってきたとしましょう。そうしたら、ちょうど先ほど顔のあたりについた花粉にぴったり対応するように雌しべがちょうど蜂の顔のあたりになるような位置にありますよね。こうして、無事に、短花柱花の花粉を長花柱花の雌しべが捕まえることができます。 一方で、もしも、もう一回同じタイプの短花柱花にハチがやってきたらどうでしょうか?花粉は顔の当たりにまた付くかもしれませんが、雌しべに付くことはありません。 さて、今度は、違うハチが長花柱花の花に蜜を求めてやってきました。今度は青で示した花粉はハチのどこに付くでしょうか?そうですね、だいたい口先に付くのではないでしょうか? このハチが短花柱花を訪れたときと、長花柱花をもう一度訪れたときのことを考えてみてください。 ・・・・・もうおわかりでしょうか?この植物は昆虫の体の異なる位置に花粉を着けることで同じタイプの花同士で受粉しないようになっているのです。 ほかにも、もっと簡単に1つの個体の中で雄花と雌花というように性によって花、自体を分けてしまう方法(キュウリやカボチャなど)や、雄木、雌木、のように、個体そのものも分けてしまうような方法(カエデなど)で自家受粉を防ぐやり方もあります。 身近な植物たちのよりよい未来を作る工夫を、みなさんも探してみてください。 No.046 小さきものの中に 分解して観察してみよう。 5月2日 金曜日 遠藤です。みなさんこんにちは。 今年は、気がついたらゴールデンウイークだったといったような感じで、カレンダーを見ると連休の取りにくい日程ですね。 みなさんは、どこでこのコラムを読んでくださっているのでしょうか? 「よく見れば ナズナ花咲く 垣根かな」 これは、松尾芭蕉が詠んだ句です。 よく見ないと気がつかない、そんな小さな花をつけるナズナを垣根の下に見つけた喜びを歌ったものと思います。 どんな花でも美しいと私は思いますが、きれいな色を付けたり、大きな花を咲かせると人目を引きますのでみんなの注目を集めるようですね。 でも、道ばたに咲く小さな花たちも、私たちが彼らに寄って行ってあげることでその美しさに触れたり、時には小さな驚きを見せてくれます。 ナズナではないのですが、同じくらいの大きさの花をつける植物にハコベがあります。 ![]() これがハコベです、日本全国の草原や、道ばたに分布し、花は3月から9月頃まで咲きます。ですから比較的だれでも、いつでも花を見ることができる植物です。 しかし、実物を見たことないと思われる方も多いのではないでしょうか? それは、芭蕉の言うところの「よくみれば」が無いからですね。 さて、この植物、おもしろいところがあるんですよ。 みなさんは、ハコベの花びらは何枚だと思いますか? ええっと・・・1,2,・・と数えられた方は10枚!と思われたと思います。 実は、植物で10枚の花びらを持つ植物はあまり無いのです。 園芸植物をのぞけは一般に植物の花びらは3,4,5枚が普通です。 もしも、3,4,5枚でない場合は何らかの「トリック」がそこに隠されています。 トリックの最も良くあるケースは「萼(ガク)が花びらのように変化している」というケースです。 でも、ハコベにはちゃんと萼(ガク)がついています。 ![]() さて、ハコベの場合はどんなトリックなのでしょう? ちょっと小さい花ですが、はこべの花を分解してみましょう。 ![]() わかりましたか? 1枚だと思っていた花びらは実は2枚で1つの花びらだったのです。 ハートが深く切れ込んだような花びらだったのですね。 この花びら、きれいですね。私も知識として知っていましたが、実際手にとって分解してじっくりと観察してみるとまた違ったかわいらしさがありました。 もしも、ハコベが大きな花を持っていたら、きっと、恋愛成就のお守りになりそうだと思いませんか? お守りは知っている人が少ないほど成就されやすいかもしれませんよ。 私はハートの花びらを1枚手帳の間に挟んでみることにしました。 みなさんの恋も成就しますように。 |
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