大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
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No.057
アサガオ、ヒルガオ、ユウガオ・・・
ヨルガオの花って、どんな花?
8月21日 木曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

夏真っ盛り・・・のはずなのですが、東京は雨ばかりで夏とは名ばかりな毎日です。普段の夏でも、スコールのような雨は降りますが、しとしとと降る雨ばかりで、まだ梅雨が明けていないような感じです。

雨と雨のあいだに、思い出したかのように鳴く蝉の声もなんだか、拍子抜けして聞こえるのが不思議ですね。

天気図を見てみると、そんな不思議な天気は東日本だけで西日本のみなさんは「いつもの夏」を楽しんでいることと思います。

やっぱり、夏は暑くないと雰囲気が出ませんよね。

さて、夏の植物というと、ヒマワリと並んでアサガオを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?朝顔市なんて風流ですよね。

朝顔市は普通7月に行われるのが普通ですが、そのころはまだ、つぼみが多く、実際朝顔の花を十分楽しめるのは、8月に入ってからです。

私の近所のお宅でもまだまだきれいな花を咲かせていました。



「あさがお」の最初の意味は漢字で「朝顔」と書くように、朝の顔、すなわち朝おきたての顔のことをいいます。

朝顔を源氏物語で調べてみると、

「人びと、聞こえわづらふを、大臣、「したり顔なる朝寝かな」と、とがめたまふ。されど、明かし果てでぞ出でたまふ。ねくたれの御朝顔、見るかひありかし。」

こんな風に使われていました。あえて、訳はいたしませんが、美少年は寝起きの顔もすてき、といった感じの内容です。

ところで、顔というのは多分「まるい」という意味ですから、朝に咲くまるい花、という意味で「朝顔」という名前が付いたのだと思います。

古くから日本にある植物ですが、アサガオは日本に自生する植物ではなく、中国から輸入されてきた植物です。

朝咲くまるい花だから「朝顔」。
それでは、昼に咲く「昼顔」とか、夕方に咲く「夕顔」とか、夜に咲く「夜顔」なんていう植物はあるでしょうか?

ちょっと考えてみてくださいね。

正解は、なんと全部あるのです。

ヒルガオは比較的都会でもよく見ますよね。フェンスに絡まっていて、朝顔よりも葉が細く、花はピンク色です。
http://www22.ocn.ne.jp/~tamukai/hirugao.htm

ヒルガオの仲間で海辺に生えるものがあり、「ハマヒルガオ」と呼ばれています。



海岸に生える植物だけあって、以前「海辺に生きる」ここにでお話ししたように葉の表面がつるつるしており、触ると厚みがあることがわかります。

果実ができてたので果実を採集して観察してみました



赤い矢印で示したものは果実の横断面です。まだ若い果実なのでわかりにくいかもしれませんが、アサガオも1つの果実の中に「スイカを3つに切り分けたような」形の3つの種子が入っており、果実の構造はよく似ていることがわかります。

つぎに、ユウガオですが、これは普通に生活していて花を見ることは滅多にありません。私も写真でしか見たことがないのですが、実はみなさんのなじみの植物だと思いますよ。

「かんぴょう」ってご存じですか?かんぴょうはユウガオの果実なのです。

http://homepage3.nifty.com/wako3/sizen/noyama/sanpomiti/yuugao/yuugao.htm
こちらは、夕顔の花、
http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/BotanicalGarden/HTMLs/yuugao.html
こちらはユウガオの果実です。

この果実の果肉をリンゴの皮むき機のようなもので薄く、長く削ってゆき、乾かしたものが「かんぴょう」です。

最後に、ヨルガオです。
見てもらった方が早いですが、ヨルガオとはこんな植物です。


これは、夕方に撮影したものです。


これは、深夜に撮影したもの。


こちらは翌朝に撮影しました。

ユウガオをヨルガオという地方もあるようですが、こちらが本物のヨルガオです。
写真では大きさがわからないかもしれませんが、花の直径は20cm近くになり、大変強い香りがします。夜に咲く花ですので、虫を呼ぶために月の明かりに最も映える色として白く、そして香りも強くなったのだと考えられます。また、繁殖力も旺盛でツルは高さ10mにも達するそうです。

最後に、アサガオ、ヒルガオ、ユウガオ、ヨルガオのまとめをしてみましょう

  いつ咲く? 原産地 なんの仲間?
アサガオ 中国・ネパール・東南アジア ヒルガオ科
(サツマイモなどが
 この科の植物です)
ヒルガオ 昼から
夕方
自生(日本の植物) ヒルガオ科
ユウガオ 夕方 インド ウリ科
(キュウリなどが
 この科の植物です)
ヨルガオ 熱帯アメリカ ヒルガオ科

アサガオ、ヒルガオ、ユウガオ、ヨルガオ、みなさんはいくつ知っていましたか?


No.056
くだもの・かじつ・たね・しゅし
自分の認識を明らかにする方法
8月10日 日曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

これから秋にかけて、くだものがおいしい季節ですね。
果物(くだもの)というと、甘いのが普通ですが、果実(かじつ)というと、キュウリやトマトなども入ります。小学校でみなさん習いましたよね。

忘れちゃいましたか?

種子+子房の成熟したもの(果肉)=果実

という風に表すことができます。

種子というのにも説明がいるかもしれませんね。

種(たね)や実(み)は植物の言葉ではなく、国語の言葉ですので植物の果実を指すこともありますし、時にはお寿司のしゃりの上に乗っているものや、おにぎりの中に入っている物も指しますよね。

種子というと植物の用語ですので胚珠(懐かしい響きですね)が受精後になるものだけに限られます。

図にしてみると



こんな感じになります。

ちょっと難しいですか?

似たもの同士という意味では「果実(かじつ)」と「果物(くだもの)」がペアになり、「種子(しゅし)」と「種(たね)」がペアになります。

果物(くだもの)、であれば、必ず果実(かじつ)ですが、その逆は正しいとは限らず、種子(しゅし)あれば必ず種(たね)ですがその逆は正しいとは限りません。

その語の含む範囲の大きさを図にすると



こんな感じになります。

もう1つよくこんがらがってしまうのに、野菜とくだものというのがありますよね。
こちらは、全然学問としての植物とは関係ありません。

一般的なイメージとして、リンゴや、イチゴや、レモンは果物、ナスや、トマトは
野菜・・そんな漠然としたイメージをきちんと分ける方法を考えてみました。

「野菜・果物検索表」

 質問1 食べる部分は
甘くない・・・・・・・・・・・質問2
甘い・・・・・・・・・・・・・質問3
 質問2 その植物は
1年で、枯れてしまう・・・・・野菜
何年も生きる(木になる)・・・質問3
 質問3 食べる部分は
果実・・・・・・・・・・・・・果物
果実以外・・・・・・・・・・・野菜


こんな感じでどうでしょうか?

何気なくこれは野菜、これは果物・・と思っていたものも、こうやって検索表を作ってみると、自分が何を基準にして物事を分類してきたのかがわかります。

農林水産省では、果物と野菜の区別は木か(果物)、草か(野菜)で単純に分けてしまっているそうですので、ここで考えた分類表とは異なります。

このように、ものを2つに分けながら分類する表を「検索表」といいます。検索表の選択肢はかならず2つに別れており、その質問は対になっていないといけないことになっています。3つに別れているものや、質問が対になっていないものは検索表とはいいません。

これらの表を心の片隅において八百屋さんでいろいろ確かめてみてくださいね。
そして、検索表の例外や、自分の考える野菜・果物検索表ができたら是非教えてくださいね。


No.055
ヤツデの指は何本?
実際に数えてみる、という観点
8月2日 土曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

東京では、やっと夏らしい天気になってきました。
でも、吹く風はまだ5月の雰囲気。

みなさんは、いかがお過ごしですか?
子供達は過ごしやすい夏休みを楽しんでいることでしょうね。

今回はまず写真から見てみてください。



家の陰や、公園の隅の方など、ちょっと目立たないところに生えている植物で、名前は「ヤツデ」といいます。名前の由来は、写真で見ていただいたように葉が手のひらのような形に切れ込みがあり、8つの指を持つ手、というところから名前が付けられています。

さてさて、みなさん、不思議だと思われましたか?

私たちは植物を見るときに名前を聞くとすっかり安心してしまって植物そのものを観察することを忘れてしまいがちです。

「指が8本の植物だから、ヤツデかぁ。なるほど」

写真を見ても、そして、実際のヤツデを見てもその指の数の秘密にほとんどの人は気がつきません。

それでは私と一緒にヤツデの「指」の数を数えてみましょう。



1,2,3,4,5,6,7,8・・・・・9

ヤツデなのに指は9本ありますね。
この個体だけが特別なのでしょうか?試しに、いろいろなところにあるヤツデの指を数えて、グラフにしてみました。



横軸はヤツデの指の数、縦軸は調べた葉の中での%を示しています。
これを見ると、7と9が多くて、8は少ないということがわかります。

何で8は少ないんでしょうか?それは、葉の葉脈の走り方と関係があるようです。



ヤツデの葉脈は赤で示したような葉の真ん中に大きな主脈が走っており、その左右に均等に葉脈があって、その葉脈がヤツデの指の「骨」となっています。

必ず真ん中に1本「骨」が通っているということは指の数は自動的に「奇数」となるわけです。グラフでも、3,5,7,9,11が2,4,6,8,10よりも多くなっています。

ヤツデの本当の名前の由来はきっと、語呂の良さと、指の数が「多い」ということを言おうして、つけられたのでしょうね。

ヤツデは、何も語ってはくれませんが、私たちがちょっとした関心の心を持つことで、植物たちの聞こえない声を聞くことができるのです。

夏休みをとられて、山や海に出かけることも多いと思いますが、くれぐれも事故には気をつけて楽しいお休みをお過ごしください。


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