大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
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No.075
アトラス果実の進化と構造
互いに関係しあう果実の構造
2月20日 金曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

前々回の果実のイチゴと、キイチゴの構造についての話は、今までの全コラムでもっとも内容が難しかったと思います。

みなさんどうでしたでか?理解していただけたでしょうか?

果実、種子というのは私たちが生きて行く上で欠かせない食料の主要部位です。ご飯だって、パンだって、そうですよね。

私たちの食べている部分がいったいどの部分なのかを知ることは大変興味深いことだと思います。

今までNo.67 *1), 70 *2), 72 *3)と3回にわたってみなさんと見てきた果実の構造を知っていれば、たとえば、きゅうりはどこを食べているのか?、ピーマンはどこを食べているのか、そんなことに簡単に答えられるようになる思います。

今回は専門用語はほとんど使いませんでしたが、正確な用語で説明するには果実の種子を放出する様式、果実の水分含有量から見た様式、使用部分から見た様式、など今までの3倍程度複雑な果実を見る観点によって果実をそれぞれの観点で分類します。

したがって、同種の植物の果実でもたくさんの名前が重複してつけられています。たとえばコラムNo.72で紹介したイチゴなら、「イチゴ状果かつ、痩果かつ、偽果かつ、複合果(用例によって集合果ともいう場合もある)」のようになります。

複合果と集合果は本来、相反する用語のはずなのですが、混同され使われています。ここでは詳しく説明しませんが、その理由を知るためには200年以上前からの用語の歴史を追うことが必要です。

私たちはそうした用語上の複雑で本質と関わりの薄い部分を避けながら、構造の本質的な部分を一緒に見てきました。

このことは一般の人だけではなく、植物分類学という、この分野のプロの先生の論文を見てもしばしば誤りが見つかるくらい、難しい分野です。

最後に、桜子さんのイラストを再構成して今まで見てきた果実の構造の関わりを1枚の図にまとめてみました。



この図のリンクの先にはもう少し大きな図をリンクさせておきました。適宜リンク先の図をご覧になりながら読んでください。

この図で読みとれることは

A) 葉状の器官(心皮)に生殖器官(胚)がつつまれることで果実ができてくること*4)

B) それぞれの果実は、全く新しい仕組みでできているのではなく、あるユニット(今回の場合ではサクランボ型果実ユニットが)が増えたり、減ったり、くっついたり、離れたりすることで多様な果実の構造が形成されること。

この2点が理解していただければ十分だと思います。

イチゴとキイチゴでの部分で示したように果肉が発達するか、未発達のまま成熟するかも、重要な指標ですが、果実の構造から見たときは本質とはあまり関係ないので、そういう観点もあることを押さえていただければいいでしょう。

いかがだったでしょうか?八百屋さんやスーパーで少しでも買い物が楽しくなればうれしいと思います。

みなさんがお店で見た野菜や果物でこの仕組みはどうなっているのか知りたいものがあれば解説のリクエストを募集します。メールしてくださった方には直接お返事できると思います、また、いくつか質問がたまったらこのコラムでも紹介したいと思います。

遠藤 (endo@mobilegarden.net)

*1) 果実の進化
葉から果実へ:サクランボの場合
http://www.macmem.com/endo/mb200311.html#067

*2) 「サクランボ」を増やして「サヤエンドウ」を作る話
そして、キウイフルーツを組み立てるまで
http://www.macmem.com/endo/mb200312.html#070

*3) サクランボからキイチゴへ
サクランボをCopy & Pasteして作るイチゴの進化
http://www.macmem.com/endo/mb200401.html#072

*4)ここでの果実は心皮のある植物の果実を想定しています。


No.074
一枚の写真から
どうしてこんな所に?
2月11日 水曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

街を散歩すると、なんでこんな所に?ということころに、植物が生えていることがあります。

先日も、こんな所を見つけました。



古い建物の入り口なのですが、雨どいの受け口の所に何か植物が生えていますね。もうちょっと拡大してみてみましょう。



葉のかたちからクワという植物だと思われます。

この入り口の反対側も見てみました。



こちらにも、何か、緑色のものが見えますね。



拡大すると、こんな植物が生えていました。
やはり、葉のかたちから、赤い矢印の植物はイノモトソウ、青い矢印の植物はヤブソテツという植物のようです。

この写真からどんなことが分かったら、おもしろいでしょうか?
私はこの入り口の両側の壁に生えている植物がどうやって、ここにやってきたのかが分かったら、おもしろいだろうと思いました。

みなさんは、どうやってこの植物がこんな変なところにやってきたと思いますか?

タンポポの果実のように風に飛ばされてやってきたのでしょうか?それとも、果実を鳥が食べて、フンという形で種子をここに落としていったのでしょうか?

それぞれの植物がどんな風に種子を散布するかは図鑑を見ても書いてありません。しかし、今までのモバイルガーデンを読んでくださった方なら、この問題に答えるのはそんなに難しくはないはずです。

まず、今回の場合は名前が分かっていますから、図鑑やwebで検索してそれそれの植物についての情報を調べてみましょう。

普通は、図鑑を調べたりweb検索をしても壁にどうして生えているかなんてことは書いてありません。それではどうやって調べればいいのでしょうか?

クワを図鑑で調べると

・・・果実は初夏に黒紫色に熟し食べられる。・・・

なんて書いてあります。食べられるんですって!、ということはどうですか?動物に食べられてその動物が遠くでフンをした中に種子が残っていて子孫を残すタイプの植物なんだってことが分かりますよね。

さて、今度はイノモトソウと、ヤブソテツですが、両方とも図鑑を引くとシダ植物だってことが分かります。

例えばこんな風に書いてあります。

・・・ヤブソテツは草本性シダ植物で、日本では岩手県南部を北限とし、中国、朝鮮半島インドシナ、タイにも分布する。・・・

シダの果実や種子はどうなっているのかというと、シダ植物は実は果実や種子はできません。みなさんは中学校で習ったはずだと思いますが、シダ植物は「胞子」と呼ばれる特別な生殖細胞を使って子孫を増やします。さらに、web検索等で「胞子」を検索してみると

例えば、
http://scied123.ed.hiroshima-u.ac.jp/plantrep/fz_spc.html

このページではゼンマイというシダ植物の胞子の入った袋の大きさは1つ0.5mmで、その中に胞子がたくさんはいっており、袋が破けると胞子を「風に乗せて四方に飛ばします」と書かれています。

これで、どうして、イノモトソウと、ヤブソテツが壁に生えているのか分かりましたね。

クワは、たぶん鳥に食べられて、そして、イノモトソウとヤブソテツは風に乗ってそれぞれ、建物の入り口にたどり着いたのだと思います。

そう思って写真を見直すと、シダ植物が生えている方には鳥が留まれるような所はありませんが、クワの生えている所はちょうど、雨どいが出っ張っていて、鳥がとまるのには良さそうですよね。

こんな風に、図鑑やwebを使うと、植物観察がより楽しくできると思います。
みなさんも、なんであんな所に植物が生えているのかなと思ったときには、名前が分かればすぐに今回みたいに調べることもできますし、名前が分からなくても、果実ができるまで1シーズン観察できれば果実のタイプを実際観察することで想像することができると思います。


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