大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
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No.084
光を感知する植物
カタバミの葉の開閉運動を観察しよう。
6月21日 月曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

近所の方から「オキザリス」をいただきました。



お店ではオギザリスとか、ハナカタバミなどと呼ばれているようですが、これらは実際の名前ではありません。園芸種なので詳細はわからないのですが、種名としては大きさも色も全然違いますがムラサキカタバミで、これはその園芸種だと思います。

カタバミ科の植物はカタバミなどのように草になるものからスターフルーツのように木になるものまである大きな植物のグループです。

このカタバミは葉が深紅で、花も葉も大きく、カタバミの仲間の観察には最適な植物ですね。

せっかくいただいたので、庭先の目立つところに置いて観察してみました。

朝のオキザリス



昼のオキザリス



夕方のオキザリス



夜のオキザリス



1日連続して観察して、ちょっと変わっているなと思ったのは、昼と、夜に閉じているということです。

そこで、前回チューリップの花の開閉条件を調べた経験を生かしてオキザリスの葉の開閉の原因は何が関係しているのかを考えてみましょう。

主な原因は今回も温度か、光かのどちらかの条件だと考えられますので、光条件と温度条件を分ける観察方法を考える必要があります。

1)まず、葉が開いているオキザリスを開いている時と同じ温度条件で段ボール箱に入れてみました。30分して、あけてみると・・・



閉じていますね。

2)今度は、夜、閉じているオキザリスを窓を開け放って室温と気温とを同じにした家の中に入れて蛍光灯の光を当ててみました。すると・・・

実験前



実験後


左側の光がよりたくさん当たった方が開き始めているのがわかりますか?このように、光が当たると開き始めるようです。

3)それでは、今度は昼にオキザリスが閉じてしまうのはなぜでしょうか?
考えられる要因には次に示すような2つの理由が考えられると思います。

A:温度が高いと葉を閉じる性質がある
B:光が強すぎると葉を閉じる性質がある


どちらがより確からしいかを調べるにはどうしたらいいでしょうか?
光の量を調整することは難しいので、前回のチューリップと同じように、温度を調整してどうなるのかを調べてみました。具体的には光が適度にある部屋で、暖房をつけて温度をどんどん上げるとどうなるかを調べてみました。

温度を上げて葉が閉じなければ、光の影響だといえると思います。さあどうなるでしょうか?

まず、光が適度にあることを証明するために深夜葉が閉じたオキザリスを明るい部屋に移動させます。



すると、30分後には葉が開き始めました。このことからこの部屋は十分な光量があることがわかります。



このあと、部屋に暖房を入れ、28℃から32℃程度に保ち、1時間半おいてみました。この温度は野外で昼間オキザリスが葉を閉じているときの温度です。




このように、1時間以上経った後でも葉は開いたままです。

従って、昼間に葉が閉じてしまうのは主に「光」が強いからであることがわかりました。

今回の結果をまとめてみると

オキザリスは光が弱いと葉を閉じる
オキザリスは光が強いときにも葉を閉じる

ということがわかりました。図にしてみると



このような関係にあるといえると思います。

オレンジの線が1日の光量の変化で光量がある一定以上でも以下でも閉じることを示しています。

前回のチューリップの花の開閉は主に温度が影響していましたが、オキザリスでの葉の開閉は光が影響しているようです。

これは、よく考えれば、花は温度が上がって虫がやってくるときに花を咲かせるのが有利であり、葉は光がある時に葉を広げるのが有利だということも言えると思います。

昼間に葉を閉じてしまうのは光が強すぎ、不必要に葉の水分が奪われてしまうのを防ぐためなのかもしれません。

以前みなさんと一緒にモバイルガーデンでクズの観察をしたことを覚えているでしょうか?*1)
上に閉じるか下に閉じるかの違いはありますが、クズが日中に葉を閉じる原因や理由も今回観察したオキザリスと同じだと考えられます。

今月は植物の運動の中で、光の要因、温度の要因についてお話ししました。
実験のやり方は、チューリップ、オキザリスに関わらず共通ですので、皆さんの身近な植物の運動要因探しに使えるのではないかと思います。ご子息の夏休みの宿題のテーマなどに良いのではないかと思います。


・最後にオキザリスクイズを出して今回のお話を終わりにしたいと思います。

今回ずっと観察に使ってきたオキザリスをこのように葉を1枚だけ外に出して段ボール箱に入れたら箱の中のオキザリスの葉と、外に出ているオキザリスの葉はどうなるでしょうか?



1)外の葉は開いたままで、中の葉は閉じる。
2)外の葉も中の葉も閉じる。
3)外の葉も中の葉も開いたまま。
4)外の葉は閉じて、中の葉は開いたまま。

実験環境は段ボールに入れない場合は開いたままになる光量条件の時とします。

答えは次回のモバイルガーデンで。


*1)
太陽とつきあう方法
クズの生き方を観察してみよう
http://www.macmem.com/endo/mb200309.html#059


No.083
チューリップの花を咲かせるものはなに?
2つの条件をコントロールする方法
6月8日 火曜日

遠藤です。みなさんこんにちは、今回はチューリップのお話です。
チューリップにはたくさんの品種が知られていますが、チューリップの原産地はどこだかご存じですか?

チューリップはアフガニスタンからイラン・イラク・アラビア半島を経てトルコに至る地域、いわゆる「西アジア」地域が原産地です。

私の庭に今年咲いたチューリップをみてください。



これは原種に近い種です。

そもそも、原種のチューリップは遮るもののあまりない大草原に咲くために風でおれないように茎は短かったものと考えられます

その後、主にオランダでの品種改良の結果、いろいろな品種ができあがりました。



このように花びらの縁がギザギザになったものや、



このようにたくさんの花茎が枝分かれして多くの花を咲かせるタイプなどがあります。

チューリップを育ててみると、夜は閉じていて、昼開いていることがわかります。このことは実際に育ててみたことのある方はご存じだと思います。

チューリップが開いたり、閉じたりする条件にはどんなものが考えられるでしょうか?





温度をみなさんと一緒に調べるためにデジタル温度計を購入してみました。温度センサーをチューリップの花の中にセットして温度を調べることにします。

写真を見るとAのチューリップの花は閉じており、そのときの気温は15℃、Bのチューリップの花は開いており、そのときの気温は19℃でした。また、Aの写真は朝に撮影し、Bの写真はお昼前に撮影したものです。

このAとBとの2枚の写真からチューリップの花の開閉の条件がわかりますか?

「温度だ!」と思った人は、ちょっと早いですよ。よく考えてみると、条件を温度に絞ることはできないと思います。ちょっと考えただけでも2つの条件が考えられるからです。

その条件の一つは、光が考えられます。

もしも光がチューリップの花の開閉の条件を担っているなら、日の光を浴びてチューリップが開き、夜になって光が無くなり、暗くなると閉じる。というように考えることができます。

Aの写真は朝の写真ですから、これから日の光を浴びて時間がたつとBのように花が咲くのかもしれません。

もう一つは温度ですね。

昼になって気温が上がると、開いて、夜になって涼しくなると閉じる。

このような2つの可能性があると思います。

では、実際どちらなのかはどうやって調べたらいいと思いますか?

一つは温度条件を一定にして、光の量だけを多くしたり、少なくしたりできるようにした環境を用意して調べる方法があります。

明るいときに開いて、暗くすると閉じれば光の条件が重要だとわかります。

2つめは、明るさの条件を一定にして、温度を上げたり下げたりできる葉にした環境を用意して調べる方法があります。

温度を下げると閉じて、温度を上げると開けば温度条件が重要だとわかります。

せっかく条件を考えてみたので、実際やってみることにしました。

今回は光の条件を段階的にコントロールすることが難しいので真っ暗な部屋で温度をコントロールして調べてみることにしました。

ちょうどチューリップは鉢植えでしたのでこれを家の中に持ってきて実験することにしました。

では皆さんと一緒に実験を見てゆきましょう。

実験は深夜0時に花の閉じているチューリップを暗室に入れました。このときの室温は18度でした。この温度を保つためにヒーターを使って室内を加熱しました。10分に1回ずつ暗室の中のチューリップを観察することにしました。



20分後、暗室のチューリップはもうこんなに開いていました。このときの室温は21度でした。



暗室の中でも温度が高ければ、チューリップは花を開かせることがわかりました。では、こんどは、温度を下げてゆくとどうなるでしょうか?

この日の外の温度は約10度だったので、暗室の窓を開けて外気を取り込みながら室温を10度程度にして、最初の1時間は10分ごとに、その後は30分ごとに1度観察することにしました。

時間がたつごとにだんだんとすこしは閉じつつあるようなのですが、いくら観察してもなかなか、完全に閉じないので、おかしいなと思ったのですが、なんと、朝の4時半にやっとこのように閉じているのを観察することができました。



このことから、

1)チューリップの花の開閉には温度が関わっている。
2)チューリップの開き始める温度は15度から19度の間くらいである。
3)開くときは20分程度で開くが、閉じるときには3時間半以上かかる。

ということがわかりました。

2)については、文献などでは18度とされています。

温度によって開閉することはご存じだった方も多いと思いますが、開閉にかかる時間は同じではないのはちょっと意外でした。

知識として知っていることでも、実際やってみるとおもしろい結果が出ることがあります。植物だけのことではありませんが、頭でいろいろ考えるだけではなく、実際やってみるということも重要ですね。


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