大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
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No.087
臨海実習(2)
タイドプールに生きる生物たち
7月26日 月曜日

遠藤です、みなさんこんにちは。

前回のコラム、いかがでしたか?「ウメボシイソギンチャク」おもしろい生き方でしたね。

さて、前回に引き続いて「3、タイドプールで生きる生物たち」のお話です。

潮が引いた後は完全に干上がってすべてが陸地になってしまうのではありません。よく見ると所々の岩のくぼみに小さなみずたまりができます。

このみずたまりのことを(タイドプール: Tidepool)といいます。

まったくタイドプールを観察経験のない方は、はじめタイドプールには何も生き物はいないと思われるかもしれません。でも、そこで、あきらめないで腰を下ろしてじっと観察してみてください。しばらくすると・・・





このような魚やエビ、ヤドカリ、ウニなどを見つけることができるでしょう。

タイドプールの特徴は

A、タイドプールの大きさは海より小さい
B、水温の変化は海より大きい

という2点があげられると思います。

Aは当たり前ですが、重要なポイントで、小魚や稚魚が大きな補食者から一時避難するのに最適な場所だということができます。

小魚が大きな魚から逃げる方法としては



このように大きな魚が入ってこられないところに逃げる必要があります。図では単純に水深だけの違いで書いてありますが、イメージとしてはこんな感じでしょうか。
イラストはいつものように桜子さんにお願いしました。

小魚が沖にそのまま移動しないで、温度変化の大きな厳しい環境のタイドプールにわざわざ残る理由はこの1の「タイドプールの大きさは海より小さい」という特徴のためだと思われます。

Bについては実際に子供たちに手伝ってもらって水温を比較してみました、この日の気温は24℃でした。

ぎりぎりまで海に近づいて波打ち際の温度を計ると27℃



タイドプールの温度は29℃でした。



海の沖の水温はもっと低いと思いますが、それでもタイドプールの温度は気温より5℃、波打ち際よりも2℃も水温が高いことがわかりました。

そのほかにはタイドプールは水の量が少ないので蒸散の影響から海水の塩分濃度もタイドプールの方が高いかもしれません。これも、簡易塩分計などで調べてみるとおもしろい研究ができると思います。

夏休みに入り、子供たちのもっとも生き生きした姿をあちこちで見かける楽しい季節です。ご家族で海におでかけの際には事故に十分注意され、海辺の生物も観察してみてくださいね。


No.086
臨海実習
満ち潮と引き潮の間で暮らす生き物たち
7月14日 水曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

講師をしている科学センターで行われた臨海実習で神奈川県の三崎海岸に出かけました。

子供たちと磯の生物を観察するのは楽しいものです。磯の生物を観察する視点はいくつもありますが、潮の満ち引きと生物の関係を見てみることにしました。みなさんも、ご一緒に観察してみませんか?

潮間帯の生物たち
潮間帯とは
潮が満ちたときと引いたときの間のエリアを潮間帯といいます。

そんなにたいした面積ではないかと思われるかもしれませが、同じ場所を時間をおいて写真に取ってみると
        

左右の写真は2時間しか経っていないのですが、このように広い面積が毎日海の下になったり、海面の上に出てきたりしているのです。

これだけを観察させても子供たちは意外だと思うようで、「すごーい!」なんて言っていました。

潮間帯の生物の生存戦略

このような(水陸両用)の潮間帯は陸地だけ、海だけの場所よりも生存条件が厳しいので生育する生物は少ないような気もしますが、実際は生物の宝庫とも呼べるような多様な生物が暮らしていることを確認することができます。

どのようにして条件の厳しい潮間帯で生物たちが暮らしているのかを観察してみました。

1、沖に流されて行く

潮が引いてゆくと潮に合わせて沖に流されてゆき、満ちてくると海岸付近までやってくる生物がいます。これは、正確には「潮間帯」の生物ではありませんが、潮が引いた後で見られる生物だけが潮が満ちたときにそこにいるわけではないということを心の隅においておいてください。

2、岩にくっつく

海草や、イソギンチャクなどの動けない生物や、ヒザラガイなどの動きが非常に遅い生物は潮位の変化について行くことができずに陸上に顔を出してしまうことになります。

したがって、強い日差しと乾燥に耐える仕組みが必要となります。

何か、赤いゼリーみたいな、梅干しみたいなものが岩についていますが、なんだと思いますか?



これを持って帰って、水槽で観察してみると、梅干しの一番上の部分がだんだんに開いてきて・・・



さらにしばらく観察していると、この梅干しの正体は下の写真のように、イソギンチャクだと言うことがわかりました。



このイソギンチャクは見たままの名前で「ウメボシイソギンチャク」といいます。

引き潮になると、自分の作る透明な膜で自分自身全体を覆って、乾燥から耐えているようですね。

イソギンチャクの仲間の乾燥に対する耐え方としてはほかにも



このような、石の鎧(よろい)を着て乾燥から耐える「ヨロイイソギンチャク」も観察することができました。

下の写真で矢印で示した貝は鳥の「鵜(ウ)」の足に似ていることから「ウノアシ」と言う名前の貝です。こうした1枚貝などは、岩にぴったり自分の体をくっつけて、次の満ち潮を待っています。



このようにそれぞれの特徴を生かして潮間帯に適応して暮らしています。

次回、3つめの生き方として、タイドプールに生きる生物たちを観察してみたいと思います。お楽しみに。


No.085
スイミーと花たちと
小さき弱きものたちの工夫
7月1日 木曜日

遠藤です。みなさんこんにちは。

皆さんは、スイミーという、絵本をご存じですか?



すばしこい小魚のスイミーは自分だけがみんなと体の色が違って、真っ黒です。ある時大きな魚がやってきてスイミーの仲間たちを食べようとします。

海で小さな魚が大きな魚に食べられないようにするために、みんなで一緒に集まって大きな魚に見せるというアイデアをスイミーが思いつき、スイミーは目の役割を果たす、というおはなしです。

どんな人でも、自分の役割がある、ということが書かれているおはなしだと思います。

実際水族館で大きな水槽を見ると、アジやイワシなどの小さな魚は群れになって泳いでいるのを確かめることができると思います。

植物の世界でも、スイミーと同じで、小さくて、目立たない者が集まって、大きく見せるということがあります。



こんなのはどうでしょうか?

植物の場合は、スイミーたちとは逆で、昆虫や鳥たちに集まってもらうために、自分たちを大きく見せています。

この植物はガクアジサイといい、特に集まった周りの花はひときわ大きく目立つようになっていますね。



こちらは、ハンゲショウという植物です、矢印の部分が花の集まっている部分(花序)です。ハンゲショウはそれだけでは足りないと思ったのか、花序に最も近い葉を白く脱色させることで、さらに花が目立つように工夫しています。

ハンゲショウの名前の由来は暦の上では、夏至から11日目を半夏生(はんげしょう)といい、そのころに花を咲かせるからとも、葉が半分だけお化粧をしているように見えることから「半化粧(はんげしょう)」となったとも言われています。

身近な植物を見てみると、ヒマワリ、ミズバショウ、ハナミズキ、ノギクの類など思ったよりも今回見たような小さな花が集まっている植物は多いものです。皆さんも探してみてくださいね。

・前回のオキザリスクイズの解答

今回ずっと観察に使ってきたオキザリスをこのように葉を1枚だけ外に出して段ボール箱に入れたら箱の中のオキザリスの葉と、外に出ているオキザリスの葉はどうなるでしょうか?



1)外の葉は開いたままで、中の葉は閉じる。
2)外の葉も中の葉も閉じる。
3)外の葉も中の葉も開いたまま。
4)外の葉は閉じて、中の葉は開いたまま。

という問題でした。30分後、オキザリスは・・・



このようになっていました。
ということで、正解は (1)の「外の葉は開いたままで、中の葉は閉じる。」でした。

このことから、オキザリスは葉1枚1枚で光を感知して葉を広げたり閉じたりすることができるようですね。

皆さんの予想はどうでしたか?


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