
大学博物館で植物の研究をしている、遠藤さんのコラムです。
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No.091
よつばのクローバー クローバーに込めた幸せへの想い 9月20日 月曜日 遠藤です、みなさんこんにちは。 ![]() おまじないで、よつばのクローバーを見つけて持っていると、幸せになれるという言い伝えがありますよね。 草原でよつばのクローバーを探したことのある人も多いでしょう。 クローバーは和名をシロツメクサといい、ヨーロッパから日本に陶器を輸出するときに木箱の中で陶器が割れないようにするため、クッションがわりに「つめた」草で、花の色が白かったことから、シロツメクサと呼ばれるようになりました。 よつばのクローバーは自然界では10万本に1本程度だと言われていますが、実際にはよつばの出やすい株がありますので、一度見つけると周りにたくさんあるのを経験的にご存知かと思います。そのため、感覚的にはもう少しよつばの確率は高いと思います。 調べてみるとよつばの1枚1枚には意味があり、それぞれ「名声」、「富」、「満ち足りた愛」、「健康」、この4枚がそろった状態が「真実の愛」、すなわち幸せを意味し、よつばのクローバーを持つことで、幸運がもたらされるのだそうです。 最近友人からよつばのクローバーのキーホルダーを買ったよ、と言われました。 見せてもらったのですが、見てみて私はちょっと考え込んでしまいました。 写真を取らせてもらったのでちょっと見てみてください。 ![]() もちろん友人には「すてきなキーホルダーですね」と言ったのですが、あれ?と思った方は植物がお詳しい方だと思います。実は、この植物はデンジソウと言うシダ植物なのです。 シダ植物はツクシやワラビの仲間で、花も咲きませんし、種子も果実もつけません。クローバーとは全く違う植物で、 ![]() このような沼地に生えます。葉は「田」の字のような形をしているので「田字(デンジ)草」と呼ばれ、葉はすべてよつばとなります。 幸せが10万分の1という「希少価値」によるものだとしたら、デンジソウの葉を持つ友達には幸せはやってこないことになりますが、よつばに幸せがやってくるなら、そしてそれを持つ人の幸せへの願いの大きさが幸せを招くのであれば、友人が大事に持っていたデンジソウのキーホルダーもきっと役に立つだろうと思いました。 No.090 蜂の巣という名前の植物 ハス・レンコン 9月10日 金曜日 遠藤です。みなさんこんにちは。 八百屋さんに行ったら今年のレンコンの出荷が始まったと聞きました。 レンコンはみなさんご存知だと思いますが、レンコンはどんな花を咲かせると思いますか? 答えをおみせする前にお手元のMacで「れんこん」と入力して漢字に変換してみてください。 「蓮根」と変換されて出てきましたか? そうですね、答えは「蓮(ハス)の根」(植物学的には根ではなく、茎ですが)がレンコンなのです。 ![]() これは、今年、私の庭にある小さな池に咲いたレンコンの花(ハスの花)です。 レンコンは沼地に生えるため空気を取り入れるためにたくさんの穴があいています。 穴があいているのは、レンコンの地下茎だけではなくてレンコンの葉の葉柄にも穴があいています。 そこで、レンコンの葉柄を輪切りにしてみました。 ![]() 矢印の部分が空洞になっていることがわかると思います。 ![]() レンコンの穴はどこまで繋がっているのかというと、葉柄を通って、葉の表面の赤い矢印の所まで繋がっています。ですから、朝露のついた葉の葉柄を切り取って、切り口から息を吹き込むと、赤い矢印の部分から空気の泡が露の水滴の中に出るのがわかると思います。 このすばらしい通気性は空気を得ることができにくい沼地で生きてゆく知恵なのだと思います。 レンコンを料理したり、食べたりするとき、レンコンをよく見ると必ず矢印のような小さな穴が2つあいているはずです。 ![]() 実は、この小さな2つの穴がある方がもともと上(水面側)になって生えていたのです。 レンコンを食べるときにどっちが上(水面側)だったかを調べてみてください。 レンコンの花、葉、茎を見てきましたので、最後にレンコンの果実、つまりハスの果実はどんな風になっているのかを見てみましょう。レンコンの果実は次の写真のように肥大化した花床(花枝の先端部分)の中に埋もれています。*) ![]() ところで、これ、なにかに似ていると思いませんか? そう、蜂の巣みたいですよね。 ハスは昔は、ハチス(蜂巣)と呼ばれていたのです。 *)今回のコラムでは「ハチの巣」の中に入っている物を「果実」としてご紹介しました。文献によっては、ハチの巣全体を「果実」として扱い、その中の物は「種子」であるという意見もあるようです。私が観察した限りでは、理由については難しくなるので触れませんが、今回のコラムの内容が正しいと思います。 No.089 イネと共に生きる植物 水田雑草のしたたかな戦略 9月1日 水曜日 遠藤です。みなさんこんにちは。 暦の上では夏も終わり、秋の日々となりました。しかし、東京ではまだ、気温も湿度も高い日が続いています。 近所の水田を見に行ってみると、強い日の光を浴びて稲穂の頭が下がり、果実が実りつつあるのを観察することができ、秋の訪れを感じさせる光景が広がっていました。 ![]() 用水路の両側に広がる一面の水田を見ていると時より明らかにイネではない植物が生えているのに気がつきました。 ![]() この植物はイヌビエというイネと同じグループの植物です。 イヌビエは花序(花序:花の集まり)以外は大変よく似ています。 近くで見るとこのようなイネによく似た姿をしており ![]() 葉は、さらに似ています。 (写真の上側がイネ、下側がイヌビエです。) ![]() しかし、一面に広がる田んぼをくまなく見ても、イネと一緒に生えているのはイヌビエだけです。 イネの仲間の植物は日本に320種もあるのに、水田にはどうしてイヌビエだけしか生えていないのでしょうか? きっと、シルエットが似ているだけでは生きていけない何らかの「ひみつ」があるはずです。 そこで、イヌビエとイネの生活史を図にしてみました。 ![]() この図で、イヌビエはイネの田植えよりも遅く発芽して、刈り取りよりも早く種子を熟し、種子を落とすいうことがわかります。 このことは大変重要な意味を持つことがわかります。 もしも、イヌビエが田植えよりも早く芽を出したら、代掻きなどの田植えの準備のために畑にスキ混まれてしまい死んでしまうでしょうし、もしも、稲の刈り入れよりも後に種子が熟す植物であれば自分の種子が熟さない前に刈り取られてしまい、子孫を残すことができません。 このように、 1)イネによく似たシルエットを持つこと 2)田植えよりも後で発芽すること 3)イネよりも早く種子を付けること この3つの条件がすべてそろった植物だけが、水田雑草としてイネとともに生きてゆくことができるのです。植物がわざわざこのために進化したわけではありませんが、イヌビエの生存戦略には驚かされることばかりです。 イネと、イヌビエは穂が出るまで本当に区別がつかないのかというと、実はよく見るとちゃんと区別がつきます。 どこを見ると区別できるかというと、「葉舌」という葉と茎の間にある器官があるかないかを調べれば一目瞭然です。 イネには、 ![]() 矢印のような葉舌があるのに対して イヌビエには ![]() 葉舌がありません。 しかし、農家の方が広い面積の水田のイネを一本一本見て回って引き抜くことは不可能ですのでイヌビエにとってはこの程度の違いは気にするほどのものではないのでしょう。 イヌビエのような戦略は植物ばかりではありません。 ヒバリは小麦畑に巣を作ることが多いのですが、小麦が青々と生長した4月頃に巣を作り、小麦の刈り取りをする直前、6月頃に巣立ちを迎えます。 このように、人間の作り出す農業のサイクルに巧みに合わせて生きる生物がいることがわかりました。 日本で多くの面積を占める水田や畑では私のご紹介した2種以外にも多くの生物が農作物とともに、したたかに生きていると思われます。皆さんもそうした生物を探してみて下さい。 |
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