
GMしらいしが、CD棚からiTunes棚に移した音楽のコラムです。
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美しいジャケットと音楽の裏でのドタバタ劇 マックメムGMのしらいしです. 前作"Lizard"から約一年後,1971年の年末に発表されたキング・クリムゾンの4枚目のアルバムです.クリムゾンが好きな人には比較的評価されており,私も*あの暗さ*が大変お気に入りなアルバムです. 1970年の11月にボーカル&ベースのゴードン・ハスケルが脱退してしまいます.前作完成直後の事です.理由はソロ活動に戻るという事だったのですが,キング・クリムゾンという特殊なバンドでの活動に耐えられなかったのではないかとも推測されています. そのため,ロバート・フリップはまたもメンバーのオーディションを行いますが,なかなか適任のボーカリストは見つかりません.このオーディションには,なんとブライアン・フェリーの姿もあったそうですが,フリップは彼の声に強い印象を受けたもののクリムゾン向きでは無いと判断したそうです.(のちにフリップの助言により,ロキシー・ミュージックはクリムゾンと同じマネージメント会社と契約します) そしてある日,オーディションにイアン・ウォレスという人物がやってきます.彼はボーカルとしては不合格になりますが,ドラマーとして素晴らしい腕前を持っている事がわかり,なんとアンドリュー・マックロックを解雇して,ドラマーとしてキング・クリムゾンに加入が決まります.またボーカリストの方も1970年の押し詰まった時期にオーディションにやってきたボズ・バレルに決定します.彼のボーカルはフリップを狂喜させたとの事.またベーシストも決まりかかったもののキャンセルされ,結果的にボズがベースも弾く事になります.(彼はそれまでベースを弾いた事は無かったらしい) こうして第三期キング・クリムゾンのラインナップがようやく決定し,1971年のクリムゾンは,ヨーロッパやアメリカへのライブツアーと,本作"Islands"のレコーディングに精力的に取り組む年を過ごす事になります. "Islands"はまずジャケットが美しいと思いませんか? これは射手座の三裂星雲の写真です.作品のイメージとぴったりの深淵で暗い(クリムゾンを形容する場合,この言葉がいつもついて回りますが)サウンドです. メンバーはギターのロバート・フリップ,詩のピート・シンフィールド,サックス&フルートのメル・コリンズに新しく加わった二人が正式メンバーとなり,前作と同様にピアノのキースティペットと彼のグループから何人かが参加しています. レコードに針を落とすと(死語)最初の曲は"Formentera Lady".いきなりストリングベース(コントラバス)の低音で始まり,明らかにこれは絶望のモチーフではないかと思うような暗いところからスタートします.演奏は非常にジャージー.それも思い切りフリーな演奏をメル・コリンズが展開しているのが耳につきます."Sailor's Tale"は激しいリズムと短いリフの上で,再びメル・コリンズのサックスとフリップのギターが暴れまくるインプロビゼーションが展開される曲.ライブでも定番となる名曲です. B面にうつると今度はクラシカルにオーボエとストリングスが静かに流れる"Prelude 〜 Songs of the Gulls".そして終曲でありテーマ曲の"Islands".この最後の曲は,クリムゾン史上最も美しくはかない,そして荘厳な展開を見せます.特にコルネットのマーク・チャリグの演奏は,ヘタなエフェクトをかけず生々しく演奏され,かえって聞く者を引きつけます. "Islands"は,特にテーマ曲を含むB面の演奏内容において,クリムゾン史上では異質な音楽です.後にメタルの元祖ともなる激しいギターサウンドとは無縁のものです.常にプログレッシブしているキング・クリムゾンにとって,これもまた一つの通過点だったのでしょうし,私はこのB面が大好きです. さて今回のメンバー編成には,ローバト・フリップのバンドに対する新しいアプローチが見られて興味深い点があります.これまで,デビュー作は別として"In the wake of Poseidon","Lizard"とメンバーがしっちゃかめっちゃかになる中,自分と詩のピート・シンフィールドがオーガナイズし,全てをコントロールしていた手法と実験を,自身とピートによる大枠のプロットは変えないものの,演奏においては他のメンバーに比較的フリーに演奏させるスタイルを作りたかったのではないでしょうか. 事実,ゴードン・ハスケルが脱退したあとのオーディションで,ボズ・バレル,イアン・ウォレスが加わり,それにメル・コリンズを含めた3人は,インプロビゼーションにおいて直感的なプレイを得意としています.彼らのルーツはジャズやソウルであり,頭でなく体で演奏するタイプのプレイヤー達です.こうして考えれば,アンドリュー・マックロックの解雇の謎も解けるような気がします. また最初のアメリカ・ツアーが行われたとき,イアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルスが抜けてしまった事が記憶に新しいフリップは,その轍を踏まぬよう,ライブのアグレッシブさとプレッシャーに耐えられるフィジカルなプレイヤーを選んだとも言えます. ところがこのアプローチが,実はキング・クリムゾンというバンドを崩壊させる事にもなってしまったのは皮肉な事です.それは,創設時からのメンバー,ピート・シンフィールドが脱退してしまうという大きな事件が起きてしまったからなのです. 頭で考える代表のようなピート・シンフィールドにとって,フィジカル系のプレイヤー達が,自分の宝物のような詩を下品に歌ったりするのは耐えられませんでした.特に詩に対する無教養さが出てしまうボズ・バレルに対して,大きな怒りを覚えたと伝えられています. また,アメリカ・ツアーに参加したピートは実は菜食主義者で,食事がほとんど出来ず,ツアーにほとほと疲れてしまった(つまりイアン・マクドナルド達と同じような経験をしてしまった)と言います.二度のアメリカ・ツアーは,クリムゾンにとって大きなエネルギーとなると同時に鬼門ともなってしまったわけです.これにより,オリジナルメンバーで残っているのは,リーダーであるロバート・フリップただ一人という事になってしまうのです. フリップ自身も,今回のバンド編成によりライブバンドとしてのキング・クリムゾンを盤石なものにしたはずが,その後のライブツアーの中で自身がバンドを制御できなくなっていく事に気付かされます. その続きは,次回の"Earthbound"のご紹介のときに.... (来週は,お盆休みで休載させていただきます) |
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