
GMしらいしが、CD棚からiTunes棚に移した音楽のコラムです。
極私的な内容で、不定期に更新します。
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漆黒の闇の中、集中せよ!耳を澄ませ! マックメムGMのしらいしです. 1974年3月に発売されたアルバムです.前作"Lark's Tongues in Aspic"から1年かかっていますが,この間キングクリムゾンは初のワールド・ツアーに2回も出掛けるなど,精力的な活動を続けています.(メンバーを完全に入れ替えた数ヶ月間の沈黙と比べると時間的にはこちらの方が長いのですが) 実は"Lark's Tongues in Aspic"で重要な役割を果たしたパーカッションのジェミー・ミューアーは既に脱退していました.(ライブの途中でゴングを落としてケガをしてしまい,去っていったとの事)クリムゾンの音楽性に重要な役割を果たした彼の実際の在籍期間は半年にも満たなかったのですが,その演奏スタイルはビル・ブラッフォードに受け継がれていき,コンセプトはフリップ自身によって実践されていくのです. ワールド・ツアーは当初日本も予定に含まれていたらしいのですが,マネジメント上の事情で頓挫し,この時期のクリムゾンが日本の聴衆の前に姿を現す事はとうとうありませんでした. 4人になったクリムゾンは,壮絶なライブパフォーマンスを繰り広げ,後にたくさんのオーディエンス録音のブートレッグのソースを提供してしまっています.このため,公式にこの時期のライブを集大成した"The Great Deceiver:Live"というCD4枚組のボックスセットがリリースされています. 本作,"Starless and Bible Black"はこうしたツアーでのライブ音源と,ツアーの合間でリハーサルされたスタジオ録音の新曲によって構成された作品集となっていて,そのコンセプトは,前作で示された錬金術の発展,その帰結による「黒化」なのだそうで,ある意味前作と続いているシリーズ物だと考えても良いのかもしれません. タイトルである"Starless and Bible Black"は,英国の詩人ディラン・トマスの晩年の作品"Under the Milk Wood"(ミルクの森で)の序章の詩からインスパイアーされて引用されています. 「空には星も無く、荘厳な程暗い」 ただの暗さではなく,まさに闇夜のカラス.漆黒の闇の圧倒的な暗さと静けさを表した言葉は,コンセプトである「黒化」のキーワードになっています. 実際に聞いてみると,この時期のクリムゾンの即興(インプロビゼーション)の力の凄さをまざまざと見せつけられます."Earthbound"の頃とは全く違う,それぞれの楽器がうねり,絡み合い,時には突き放しながら展開していくその構成は,聴く者に集中力を要求します.(なので,疲れた時にリラクゼーションの為に聞く音楽とは向いているベクトルが180度違うのです) ツアーをやり,新曲のリハーサルをしていく中で,彼らは刺激をどこから吸収し,モチベーションを維持していったのでしょうか? 以前のようにアメリカが彼らにパワーを与えたのか? それは分かりません.しかし少なくともアメリカの聴衆は既に彼らの音楽コンセプトについていけなくなっていたようで,またクリムゾンも聴衆に迎合するような演奏の仕方をとっていません.という事は,やはりアーティスト同士のインタープレイによる内側からのパワーの蓄積と解放が働かない限り,彼ら自身も続かなかったのではないかと思います. 最後の曲"Fracture"(邦題は突破口でした)の先に,何があるのか,あったのか? 実はどん詰まりの袋小路にハマってしまったキングクリムゾン.ご存じのとおり70年代のクリムゾンは自作をもって終了してしまいます.予定された事なのか? やり尽くしてしまったのか? フリップ自身の判断によって,終わるその瞬間,キングクリムゾンは超新星のような輝きを再び放つわけなのですが,それはまた次回. ※ アルバム "Red"は既にコラムを書いていますが,クリムゾンシリーズのファイナルとしてもう一度取り上げます. |
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