GMしらいしが、CD棚からiTunes棚に移した音楽のコラムです。
極私的な内容で、不定期に更新します。


バックナンバーはこちらから


File No.030
Apr. 29th 2004

Lord of the Rings 〜 Return of the King 〜
(邦題:ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還)

ワーグナーを超えたハワード・ショアーの渾身の一作

マックメムGMのしらいしです.

2004年3月31日.アカデミー賞の生中継を私は朝から見ていました.普段はそこまで気合を入れる事も無いのですが,今回だけは特別.それだけロード・オブ・ザ・リングの世界に入れ込んでしまったからなのです.なので,今日は色眼鏡モードでお送りします.

もちろんこの作品は,監督であるピーター・ジャクソン(PJ)が凄まじいまでの情熱と忍耐で作品化したわけです.世界中にいる原作のファンに圧倒的に支持されているのは,彼自身がこの作品の大ファンであり,また作者の意図を最大限尊重した結果でしょう.

と,同時に私は音楽を担当したハワード・ショアーこそ,この作品を歴史に残る作品に仕上げた張本人だと思っています.なぜなら彼の作った音楽もまた作者が生きていたならば,また原作のファンならこうしたかったであろうと思われる,格調高く正統的な音楽を忍耐強く作り上げたからなのです.そしてその音楽の持つ力がPJの映像と最高のマッチングとなり,見る者の涙腺さえ緩めてしまいます.

そういう意味では,やはりショアーを起用したPJが一番偉いんでしょうね.

アカデミー賞は結果的に「すい〜ぷ」となり,ノミネート全11部門を全て総ナメとなる快挙となりました.音楽賞をもちろんショアーは獲得しています.

さて,このサウンドトラック作品についてですが,ハワード・ショアーは第一作目の「旅の仲間」のメイキングの中で次のように語っています.
「原作にお手本の無い作品において目指した音楽は*沈んだ船の底に長年眠っていた楽譜をそのまま再現したような音楽*である」

ロード・オブ・ザ・リングは,地球の古代の中つ国と呼ばれていた時代の物語です.現代からは約7,000年前.神話であり,ファンタジーであるこの作品を表現するために,古典的なクラシック,そしてオペラ音楽として作曲したのは,映画のスケール感,情感を表現するために至極当然の流れであったでしょう.実際,こうした音楽はジョン・ウィリアムスの手によるスターウォーズ,ジェリー・ゴールドスミスのスタートレックなど沢山のお手本があります.

ショアーが凄いのは,原作の意図を尊重するために,劇中に登場するエルフの言葉(トールキンが創生した古代の種族の言語)などを使った歌曲などを作ったり,人間の種族であるローハンのテーマに,その種族のイメージに最も近いと思われる北欧のノルウェイの民族楽器の弦楽器を使ってソロを奏でさせたりと,ただのサウンドトラックに留まらない,音楽作品としての指輪物語を作り上げた点です.

ちなみに,中つ国は英国人である原作者トールキンのイメージの中ではヨーロッパそのものです.西にホビットや人間,エルフが暮らし東方には悪の国であるモルドール(これはかつてのチンギスハンの蒙古のヨーロッパ侵略がモチーフになっているのでは?と思わせました)南方には肌の色の違う人間が住んでいます.灰色港からはさらに西の大海に渡る船が出ます.(これこそ新大陸アメリカ?)

ヨーロッパ世界,そして指輪と来れば忘れてならないのが,ドイツの作曲家であるワーグナーがいます.実際,彼の作品に上演するのに4日感かかる「ニーベルングの指輪」という大作があります.ワーグナーの場合はオペラとは呼ばず楽劇という言い方をしますが,これが約15時間だそうです.ロード・オブ・ザ・リングは,3部作で各作品が追加ショットを入れて3時間20分程度,王の帰還はおそらく4時間くらいに最終的にはなると思うので,トータルで10時間越え.シーンとしてはダラダラしているわけではないので濃密さ(情報量?)では比較するのもおかしいかもしれませんが,既にワーグナーを超えたと言っても良いんじゃないかなあと個人的には思います.

ご紹介している「王の帰還」のサウンドトラック,ジャケットは限定発売盤のものです.3部作がそれぞれ上映されるたびに限定盤が出ていたそうで,今回の限定盤もそろそろ在庫が無くなっているかもしれません.ぜひ,この盤を聞いてもらいたいのは特典DVDが付いてくるところでして,この中にショアーの音楽制作ドキュメンタリーがあります.彼の素晴らしい人柄,作曲の工程,サウンドエンジニアリング等を十分に楽しむ事が出来ます.

さて,来年はいよいよSTAR WARSのEpisode IIIがやってきます.トリロジーブームの中(盛り下がる作品の方が多し)ジョージ・ルーカスは如何に出てくるか.ジョン・ウィリアムスはEpisode IIで聴かせてくれた名曲,Across The Starsを超える感涙の音楽を作ってこれるか? PJとショアーに間違いなく刺激を受けているであろう彼らの動向も楽しみであります.


macmem.com
運営:(有)青い空 店長:猪川紀夫
info@macmem.com
日本オフィス:〒222-0037 神奈川県横浜市港北区大倉山3-5-11-A
電話/FAX:045-543-0998


■当社はオンラインストアーであり、販売形態は通信販売のみです。
■電話でのお問い合わせは受け付けておりません。メールでのみ対応させて頂きます。
■商品の価格・仕様・発売時期等は、予告なしに変更される場合があります。
■このウエブサイトに掲載されている内容を無断に転載することを禁止します。
■このウエブサイトのリンクは自由ですが、事前にご連絡ください。