
GMしらいしが、CD棚からiTunes棚に移した音楽のコラムです。
極私的な内容で、不定期に更新します。
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パブリックドメインが、人類の名作を生み出すのだ! マックメムGMのしらいしです. 今年のポピュラー音楽シーンに大きなインパクトを残した,平原綾香の"Jupiter"をお聞きになった方は多いのではないでしょうか.この曲の原曲である組曲「惑星」を作曲したのが,英国の作曲家であるグスタフ・ホルストです. "Jupiter"は,第4曲目の木星の中の中間部で出てくるモチーフをアレンジしたものです.非常に印象的なこのメロディ,しらいしは子供の頃,何かの映画番組(何曜日かのロードショーだったと記憶しています)のエンディングにオーケストラ演奏のこの曲を聴いて,子供心にとても切ない気分になったのを記憶しています. クラシックの曲をアレンジして,ポピュラー音楽の中に使う手法は珍しくありませんがこのホルストの名曲に関してはこれまであまり使われた事はありませんでした.というのもホルスト自身が20世紀の作曲家で,亡くなったのが1934年という著作権の観点から見た時に微妙な時期であると同時に,遺言の中で「惑星」の演奏に関して一切の改変を許さないという事を遺志として残していたからなのです.つまり,保護期間内であるとともに,作曲者の遺志によりこれまでカバーしたくても,いろいろなシバりがあったという事なのです. 調べてみたところ,日本では著作権は50年.また外国曲,特に第二次大戦中の連合国の作家の作品には戦時加算が10年加わって60年の保護期間になるはずですが,2004年という年は英国の著作保護期間である70年が終わる年のようです.いわゆるパブリック・ドメインに入ったという事です.平原綾香の曲が実現したのも,晴れてこの名曲のモチーフを自由に使えるようになったからでしょう. このヒットのおかげで猛烈に聴きたくなったのが,今日ご紹介している冨田 勲の手による「惑星」です.発売は1977年1月.まだバリバリの著作保護期間内で発表されたこの作品は,オーケストラの編成はおろか,世間では全く認知されていなかった「シンセサイザー」なる楽器を使って多重録音された,驚くべきもう一つの「惑星」です. 当然,ホルストの遺族達により作者の遺志が守られ続けている中でのリリースですから,権利問題の処理にはかなり苦労した事が推察されます.ライナーノーツの中で荻昌弘さん(故人)がそのあたりの事に少し触れていますが,結果的にどう遺族と折り合いを付けたのかは謎のままです.氏の解説によると「冨田氏はホルストの作品の編曲をしたのではなく,独創的な新作を作ったである.しかしそれは,勝手に作り替えたのではなく原曲を一音も歪めず,崩さず,抜かさずに新創造している」とあります.このあたりに解答がありそうな気もしますが,実際のところは分かりません. 当時,私は中学校に上がりたての頃! 世の中はオーディオブーム,FM放送をエアーチェックするのが大流行の時代.まだコンポなんて買えない自分にとって,となりの家の兄ちゃんが持っていたバラコンで揃えたオーディオセットは憧れの的でした.そこで聴いたLPレコードのTOMITAの世界.レコード盤のツヤツヤで黒々とした外観と塩化ビニールの匂いが何故か今でも記憶の片隅に残っています. CDで改めて聞き返したこの作品,四半世紀以上前の作品とは思えない,音の緻密さとダイナミックさ.クオリティの高さに驚かされるとともに,こうして今再びTOMITAの音宇宙に酔えるのは何とも幸せな事です. ライナーノーツの中には冨田氏自身の筆による「プラネッツ・ストーリー」が書かれています.火星〜金星〜水星〜木星/土星〜天王星/海王星と続く中で,宇宙ロケットの旅が物語のサウンドトラックとして展開し,その最も重要なテーマとしてあの木星のモチーフが使われているのです.オルゴールによる演奏が物語のエピローグとプロローグに使われ,冨田氏によると「そのメロディーは大宇宙共同体の歌であり,宇宙に住む同じ思考を持つ知的生命体にとっての名曲,宇宙賛歌のメロディーである」とあります.制作当時,いかに冨田氏がこのモチーフに触発され,この物語を創造するモチベーションとなったかが分かると思います. 実際私達も,平原綾香の美しいボーカル(彼女の低域は素敵ですね)に思わず耳を傾けるように,この旋律の持つ魅力の虜になってしまいます.2004年にパブリックドメインになった事によって,多くの人が惑星の持つ魅力的な旋律を取り入れた作品発表していく事により,近い将来,ベートーベンの「歓喜の歌」に並ぶような人類を象徴する名曲となっていく気がします.そして,このTOMITAの惑星も,燦然と輝き続ける名作として残り続けるでしょう. 中には編曲により原曲のイメージが歪められる事を嫌う人もいますが,こうした様々な試みにより原曲はより一層輝きを増し,メロディは人々に心に残っていくのがパブリックドメインの良いところではないかと考えるのですが,天国のホルストは,それをどう思うでしょうか. しらいしは,今度は原曲の方を聴いてみたいと思っています.昔聴いたショルティ&シカゴ響のコンビがいいかなあ? やっぱりホルスト聴くならロンドン響? カラヤン&ベルリン響がやっぱり名作か? などと原曲を鑑賞もまた楽し! (CDは買わなきゃいけないけど) |
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