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今は亡きマックのCPUアップグレードカードメーカーNewer Technology社。
店長猪川がそのNewerに勤務していたころの汗と涙の物語。
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<第十三話>激突!Newerとイ社の技術セッション対決!(2003/08/04)
Newerとイ社の最後の激突(?)は1999年秋に幕張で開かれたワールドPCエクスポの日経BP社(日経マック)主催の”パワーPCとアップグレードカードの将来”というテーマの技術セッションであった。Newerのエンジニア部門の副社長であるロジャー・カーステンとイ社の社長がマックのアップグレードに関して討論をするというセッションであった。司会は日経マックの元編集長の林氏であった。
その中でまずイ社の社長が今後の製品展望について話をした。まだその当時発売されていない2400用400MHzカード生産段階にあるのですぐに出荷開始されるだろうことと、iMac用のアップグレードカードの開発はほぼ終了した、という2点がメインの話しであった。
その頃Newerでもイ社と同様にiMac用のアップグレードカードの開発をどうするか最優先事項として討論が繰り返されていた。iMacのアップグレードカードはこれまでのもとは違いアップルのROMをコピーしてアップグレードカード上に複製する必要があり、その行為は違法ではないかという点が常に議論の焦点であった。
iMacについてはジョブスがアップルに復帰した時の目玉商品であった。ゆえにiMacに関してアップルの関心はひときわ高かった。そのiMacをアップグレードするとなるとジョブスが文句を言ってくるのではないかとNewerは恐れていた。その当時ジョブスは何か気に入らないことがあるとすぐに裁判沙汰にしていた時期である。アップルに睨まれたらNewerのような小さな会社はひとたまりもない。そこでNewerはアップルとのエンジニア部門とのコネを利用してこのROMのコピーは合法か内密にお伺いをたてたのである。答えは”ROMに触らない方がよい”というものであった。Newerのエンジニア部門ではすでにROMをコピーして動作するiMacのアップグレードカードのプロトタイプは完成しており、アップルがOKを出してくれれば生産を開始出来る状態であった。しかしアップルからの回答はノーである以上、このタイプのアップグレードカードの生産を行うことは自殺行為であった。ちなみにこのカードはS社に移ったNewerの元エンジニア達が後日製品と化し販売することになる。
そのような背景の中、この時のセッションで司会の林氏から”iMacのアップグレードカードは出てきますか?”という質問が2社に対して行われた。Newerのロジャー・カーステンは”これはライセンスの問題がありますので、大変難しい製品です。慎重に対応していきたいと考えています。”という、出荷するともしないともとれるような、アップルに対してもあたりさわりのない回答をしたのである。このセッションにアップルの関係者も来ている可能性があり、アップルを刺激するような言葉は控えたのである。
ところがこのコメントを聞いてイ社の社長はうれしそうに”ロジャーさん、うちでは開発が終わっていますから、なんでしたらうちからOEMしましょうか?”と皮肉を言って来たのである。イ社からするとNewerは本当は開発したいけれど、開発できる技術が無いので曖昧なコメントをしかできないのだ、というものの言い方であった。100人近い関係者の面前でNewerの副社長に向かってそういう喧嘩を売るような言い方をすることはないよなー、と私は頭がくらくらする思いであった。
結局このセッションはこのほかにPower PCのメーカーであるIBM社のPower PC日本担当主任のN氏なども加わり、G4の話あり、SOIの話ありと大変中身が濃いものとなった。後日このセッションに参加されたお宝鑑定団の会長ダンボ氏より”ワールドPCエクスポ中一番のセッション”と評価を頂いたのである。
結局これがNewerにとってもイ社にとっても、実際の相手にコンタクトした最後の場となった。
その後2000年にNewerはROMコピーによるiMacアップグレードカードの製品化を断念し、その代わりに既存のiMacのCPUカード上のCPUを交換するという荒技で、ROMのコピーを行わずにアップグレードするiMacカードを販売して、それなりにヒットさせた。実はNewerの再建のためにやってきた販売部長から頼まれてこのiMacのアップグレードカードを私がマックメムの前身のパワスタで日本のエンドユーザー向けの販売を手伝ったことがある。彼とすれば少しでも売り上げを上げたかったのだろう。しかしその当時のNewerの代理店であるF社からパワスタの販売に対してクレームがつくやいなやNewerは私を一方的に悪者にして製品の出荷を止めたのである。この手の平を返したような仕打ちに私は怒り、その後Newerとの取引を完全に断ったのであった。その当時名前はNewerであったが、心は別の会社になっており、もう元のNewerの社員ほとんど残っていなかった。この顛末も機を改めて書いてみたい。
ちなみに現在マックメムが販売しているiMac用のG4カードはNewerが開発したCPU交換技術を持ったメーカーに製作してもらっている。
そして私の記憶が正しければイ社からはiMacのアップグレードカードは結局出なかった。ROMコピーの違法性を気にした結果だったのだと思う。
その後P社がROMコピーによるiMacアップグレードカードを販売するに至るが、結局アップルから全く訴えられることは無かった。歴史に”たられば”は厳禁であるが、1999年当時にアップルがROMコピーのiMacのアップグレードを認めていてくれていたならば、Newerとイ社のヒット商品となり、両社の経営を支え、倒産から救った可能性は否定出来ない。
<今回で一旦プロジェクトNの連載は終了です。ただし、不定期にNewer時代の話をアップすることを予定しているので時々覗いてみてください。PowerBook 2400/400MHzの開発秘話、Newerの日常、新Newerの秘密、などを今後予定しています。>
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