
今は亡きマックのCPUアップグレードカードメーカーNewer Technology社。
店長猪川がそのNewerに勤務していたころの汗と涙の物語。
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<第五話>玉砕!マックワールド東京'98(2003/06/09)
さてサンフランシスコで新たに代理店K社が販売先に決まり、大量の在庫を処分出来る期待が高まった。特にサンフランシスコのマックワールドの翌月に控える東京のマックワールドが在庫処分の最大のチャンスと思われた。このマックワールドといのは展示会ではあるのだが、もう一方で大変重要な販売のチャンスでもあるのだ。
このマックワールドではいろいろなお店でマック本体やマック関連製品を特価で発売する。実はこういう目玉商品(商材なんていう言い方をするが)はお店だけが勝手に値下げしているだけでなく、マックワールド用の特別価格をメーカーが出していることが多い。ある種お祭りであるため販売促進のプロモーションを兼ねて通常より1割とか2割とか安い価格でメーカーが製品を提供し、それを取り扱う代理店も通常より安めの利益を設定し、販売店が売りやすい価格、お客様が買いやすい価格を提供するのだ。
話しが多少それるが、Newerでもこのマックワールドを大切なプロモーション期間と考えており、販売とは別にNewerグッズを無料で大量に配っていた。米国のマックワールドに行ったことがある方ならご存じだが、米国メーカーのグッズの配り方は半端ではない。最近は不景気のためグッズの配布はかなり抑えられているが、その当時はマックワールドでは誰もがメーカーのグッズを山ほどかかえて帰っていたものだ。人気のグッズはTシャツであるが、私もNewerの”店員”でありながら、いろいろブースにちょっと立ち寄るだけで数枚のTシャツを手に入れることが出来た。Tシャツを投げているブースもあれば、クーポン券のようなものと交換するブースもあれば、椅子にすわるようなプレゼンテーションに参加するともれなくくれるブースがあったりと大盤振る舞いであった。Tシャツ以外にも、メーカーの製品自身を抽選でプレゼントしたり、マック本体をプレゼントしたり、自動車があたるような抽選までやっていた。
それに比べて東京のマックワールドのなんてせこかったことか。Tシャツなんてのは夢また夢。一所懸命アンケートに答えて、もらえるのが鉛筆1本だったりしたものだ。その中にあって東京のマックワールドのNewerのブースでは私が音頭をとってNewerグッズやらCPUカードをばらまくというのが恒例になっていた。
私は常々東京のマックワールドでNewerのブースだけは、米国並にグッズを配ってやろうと思っていた。その当時Newerにとって日本は米国に次ぐ第二に市場であり、日本のお客様に沢山製品を購入頂いており、その利益を還元することが私の使命だと思っていた。いろいろな理由をつけて会社の予算を取り、グッズを作ってばらまく。今でも、そういう投資は長い目でみればかならず返ってくると信じている。マックメムのおまけプレゼントもここに理由がある。
さて、この1998年の代理店K社のブースで私は一日中ブースのステージを占拠して、Newerの宣伝をしてはNewerグッズをばらまいていたのである。4日間全部で、Tシャツ400枚、G3カード6つ、CDケース100個、ボールペン数百を観客にむかって投げ続けたのだ。ちなみに偶然にも隣のブースになった競合他社である今は亡き日本のアップグレード会社イ社はなんとカップラーメンを配っていた。アップグレードカードというハイテクのイメージに対して、なぜカップラーメンなのか?大変哲学的であった。
話しがかなりそれたので、マックワールド東京で大量に残ったPowerBook1400用と2400用のG3カードを処分する話しに戻すことにする。私もNewerもマックワールド東京でのセールスが在庫処分の最後のチャンスだと考えていた。で、PowerBook1400用G3カード2機種、2400用G3カード2機種をそれぞれ200本づつ、合計800本投入したのである。
それでこの時はNewerは製品を完売させたいためかなりインパクトのある価格を設定しなくてはならなかった。それまでのPowerBookのG3カードの市場価格が10万円前後であったので、その価格のおよそ半額を目安に機種毎に4万円、5万円、6万円としたのだ。それに加えPowerBook1400、2400ともに初心者個人ではインストレーションが難しかったため、そのインストレーション代もNewerで負担することにしたのだ。これだけ安ければあっという間になくなるぞと誰もがそう思っていた。
そして待望のマックワールド東京が開幕となった。初日から私は自分のブースでのステージデモはもちろん、ステージデモとデモの間も、昼食を取らず、トイレにも行かず、マイク片手に訪れるお客様に向かって”1400用のG3カードはいいよ”、”2400用のカードはいいよ”、”こんなに速くなるよ”、”こんなこともできるようになるよ”、”安いよ”、なんて絶叫しまくっていたのであった。声が潰れるまで8時間ぶっ続けのトークを敢行したのだ。PowerBook ARMYの飯嶋さんは私の畳みかけるような話しぶりに”マシンガントーク”という名前を付けてくださった。大変光栄なことであった。
そしてやっと初日が終わり、セールスの結果を楽しみにしていた。あの価格と私のステージデモを持ってすれば、ばんばん売れたことだろうと内心思っていたのである。しかし、予想とは裏腹に在庫800本のうち売れたカードがたったの30本弱であったのだ。この強烈な事実に打ちのめされる思いであった。
しかし気持ちを奮い立たせ、初日以上に2日目、3 日目とマシンガントークにさらに力を込めてプロモーションし続けたのである。しかしそのがんばりもむなしく、結局3日間全体の販売総数はわずか100本ちょっとだったのである。私はマックワールド終了後、3日間の疲れ以上に精神的なショックで高熱を出して寝込んでしまった。ベッドの中でうなされながら最後の砦であるマックワールド東京で惨敗し、この後どうして在庫処分をすれば良いのだろう...と考えたが答えなど全く思いつかなかった。
そしてこの後Newerに抱える在庫とは別に、このマックワールド東京で完売できなかった売れ残りの在庫のために代理店K社の立場が問題になっていくのであった。
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